【 努力賞 】
【テーマ:働くこと・職探しを通じて学んだこと】
私が輝ける場所
愛媛県  稲 垣 安 佑  20歳

自分には夢があった。小さい頃から少しずつ変化してきてはいるが、軸になるものはずっと変わっていない。今も叶えたいと思う夢である。

幼い頃は「夢を持ちなさい。努力すれば必ず叶うから」と学校の先生や親によく言われたものである。その当時は聞き流していたが、少し大きくなりやりたいものが見つかると、その道を極めようとした。本気でその夢を自分の仕事にしようとした。

しかし、そうはいかなかった。経済的にも“諦め”が必要だったのである。なぜ自分の好きな道に進めないのかという疑問と同時に 「好きなこと、“夢”は仕事にできないのだ」と感じたのである。

その後、大学生になりアルバイトを始めた。が、それは優しいものではなかった。そこには私が得意とするものは何も無く、どれも初めての経験だった。「何をしたらいいか分からない。出来ないことの方が多く自信が持てない。」そんなことの繰り返しだった。この「働く」ということがこんなに辛いことだとは、と小さなことではあったが痛感した気がした。その当時「働く」ことは“苦しみ”でもあったように思う。そして夢をあきらめたことと重なり「なぜみんな普通に働けるの?みんなに夢はなかったの?」とさえ思ってしまった。

 しばらくは辛い思いをしながらのアルバイトだったが、新しく勤め始めたところで少し変化が起きた。そこは学生をはじめとする若者の支援をしている施設だった。いろんな世代の人がおり、女性がリーダーを務め、率先していく“女子に優しい”環境でもあった。そして何よりも、その職場の人達は、とても温かかったのである。いつも「ありがとう」という言葉が飛び交い、お互いを尊重し合う。今までのアルバイトでは考えられない状況だった。少しでも失敗をすると怒鳴られ、「お前は何も出来ない」と言われた。しかし、そこは違った。「あなたが居てくれるおかげでこの仕事は回っているのよ」というように私の“存在”そのものを認めてくれた。「あなたはそれでいい。あなたは今生きている。それだけで十分。」これは実際に言われた言葉だ。この職場の人たちは心から“私自身”を大事にしてくれたのである。そこで私は気が付いた。自分の得意な分野で働けない、生きていけないことに悩んでいたのではなく、自分の力を発揮できないがために自分の存在を否定されたことを悲しんでいたのである。私を認めてくれないことを嘆いていたのだ。

 そして私はもう一つ思った。「些細なことでも感謝の言葉が飛び交い、私の存在を認めてくれるこの場所でなら、私にもできることがあるかもしれない」と。この職場との出会い以降私はずっとこの施設で働いている。相変わらず笑顔と優しさが絶えない職場だ。もちろん、意見が合わないこともある。施設をよりよい方向へ導くために必要なことだ。だが、「私の存在を認めてくれている」と分かっているから、率先して発言でき、行動にも移せるのだと私は思った。望んでいた夢の現場ではないけれど、私は今“働くことの楽しさ”と“私の輝ける場所”を見つけた。   

まだ私は学生であるため、今後本格的に就職活動が始まる。みんなが同じ色のスーツを着て、同じような髪形をして、同じようなサイトを使い、でもなるべく周りと同じにならないように、少しでも目立とうと頑張る。いわゆる“戦争”が始まるわけだ。どんな仕事に就くにせよ、どう仕事をしていくのか、何を学ぶことができるか、自分には何ができるかということを探ると共に“人との関わり”を大事にしている会社を見つけたい。重視できていない会社であっても、自分だけはそうでそうでありたいと思う。そしてこれを広めていきたい。きっとそこが私の“輝ける場所”であり、“夢”を描くことができる場所なのである。

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