【 努力賞 】
【テーマ:仕事を通じて実現したい夢】
原点
東京都  坂 爪 広 樹  23歳

「誰かの役に立ち、誰かを支えられる存在になりたい」

 これが就職活動をしていた際に考えていた私の働く意義である。そして、それは社会人になった今も変わらない。しかし、果たしてその意義を私は実現できるだろうか。現在の私は上司や先輩方だけでなくお客さまにまで支えられてばかりだ。仕事に慣れ始め、少しずつ数字を追うようになったが、交渉がうまくいかない日が続いた。そんなとき、私は上司に呼ばれ、以前のような笑顔がなくなっていると心配された。何もうまくいかず焦りと疲れが出ていたのだろうが、私は指摘されるまで全く気付かなかった。新入社員は元気だけが取り柄だと思っていたが、いつの間に私はそれさえも失っていたのだろう。せめて元気だけでも取り戻そうと思ったが、結局交渉がうまくいかずに落ち込む日々が続いた。気が付けば私は誰かのためにではなく、数字のためだけに仕事をしていた。それでも、交渉がうまくいき結果が出たことがあった。私は大喜びし、上司や先輩方も一緒になって喜んでくれた。そんな中、上司が私にかけてくれた忘れられない言葉がある。

 「新人なんだから取れなくても仕方ない。それでも頑張り続ければ今回のように結果につながることもあるし、断られることが勉強にもなったりする。ただ、無理だと思ったら俺に言え。足りない数字は俺が取ってくるから」

 私はこんなにも上司に助けられ、支えられていたことに改めて気づいた。そして、この時私は自分もこんなことが言えるような人になりたいと心の底から思った。働く前の私は、いずれは部下を助けられるような上司になりたいと思っていたが、苦しいことが続き、この目標はいつの間にか薄れてしまっていたように思う。しかし、私の「誰かの役に立ち、誰かを支えられる存在になりたい」という就職活動を始めたときに掲げた想いの「誰か」とはお客さまのことだけではなく、自分の周りにいる人達のことも指していたはずなのだ。その想いを忘れてしまっていた自分にひどく嫌気も差した。しかし、反対に今気づくことができて良かったとも思う。そして、そんな上司がすぐそばにいる職場で働くことができて良かったと思った。

 これからも楽なことばかりではなく、苦しいことも続くだろう。しかし、自分の理想とする上司がこんなにも近くにいたことに気づけた今なら、今度は道を見失うこともないはずだ。そして「誰かの役に立ち、誰かを支えられる存在になる」ために、これからは俯いてばかりではいられない。もう一度頑張ってみよう。これが自分の選んだ道なのだから。

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