【 努力賞 】
【テーマ:仕事を通じて実現したい夢】
母親である私が働く理由
東京都  小 松 朋 子  33歳

最近、四歳の息子が私にこう言った。「早く大人になりたいな。だって楽しそうだもん。ママみたいに自分でお金を稼いで、自分が行きたいところに一人で行きたい」。その場では「子どもだって楽しいでしょ。たくさん遊べてさ」と返したが、内心しめしめとほくそ笑んだ。自分が仕事をすることによって、子どもたちに、「大人になること」や「働くこと」に対する憧れや希望を持ってもらいたいと常々思っていたからだ。

 大学卒業後、新聞社に入社して今年で10年目。五年前に長男を、二年前に長女を出産し、以来、子育てとの両立に奮闘する日々を送っている。朝は朝食を作って食べさせ、合間に保育園に提出する連絡帳を書き、洗濯機を回している間に自分の準備を済ませて晩ご飯の下準備をし、子供に着替えるようせっつきながら洗濯物を干し、保育園の荷物と会社鞄とゴミを抱えて大慌ててで家を出る。起床から子供たちを保育園に送り出すまで、文字通りフル稼動である。もちろん慌しいのは朝だけではない。定時を迎えて会社を飛び出すと保育園に直行し、お腹がすいたと騒ぐ一歳の娘をなだめすかしながら食事とお風呂の支度をする。食事とお風呂を終えたら二人に絵本を読み聞かせ、片手間で洗濯物を畳み、子供たちを寝かしつける。一緒に寝入ってしまう日も少なくない。

ゆったり寛容な気持ちで子供の言動を受け止めたいと思っているが、現実にはなかなか難しく、早く早く!と急き立て後から悔いる日々だ。子どもの体調不良により仕事に支障をきたし、頭を抱える日も多い。本当はもう少し体調の回復を待ちたいと思いつつ、後ろ髪をひかれながらも保育園へ預けて仕事へ行く日もある。泣いている娘を振り切って仕事へ向かう通勤電車で、子供たちの写真や動画を何度も見てしまう日もある。そんな時は、なんで自分は仕事をしているんだろう、そこまでして仕事をする必要があるのか、と自問する。

それでも、仕事を辞めようと思ったことがないのは、子供たちに自分が働く背中を見せたいからだ。子育てをしながら仕事を続けることは決して楽なことではないけれど、大人は色んなことができて楽しいんだと伝えたい。それが、母親である私が働く理由であり、原動力だ。

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