【佳作】

【テーマ:さまざまな働き方をめぐる、わたしの提言】
3回目のプレ金
和歌山県  いっしゅ  25歳

「この花の数だけ年をとっても、一緒にいてくれますか?」

2017年4月28日、金曜日。目の前で100本のバラの花束を抱え、片膝をついている彼。2年間婚活に苦しんだ私とパーフェクトに価値観の合った、たった一人の相手だ。この日は、3回目のプレミアムフライデ―。二人とも早く退社し、ディナーデートを予定していたところでのプロポーズだった。

2017年2月24日より、経済産業省から企業への働きかけで、プレミアムフライデー(略称:プレ金)という働き方改革が取り入れられた。以後、毎月最後の金曜日には従業員の15時退社を推進している。個人が仕事後の時間を、自分の幸せや楽しさを感じられる体験に充てることで、ライフスタイルの変革・コミュニケーション強化・デフレ脱却を目指すという取り組みだ。

何事も、はじめは反発が生まれやすい。「早く退社をするために他の日が忙しくなる。」「周りの人が残っていて自分だけ退社なんてしにくい。」など、実際に働いている現場の人たちの声は的を射ているところも多い。しかし、晩婚化・少子化の進む今の日本社会にとって、働き方改革と職場の理解が、その改善への切り札となることは確かだろう。日本の明るい未来は、働き手の頑張りと、今後生まれてくる子どもたちにかかっている面が大きい。労働人口を増やすために共働きを応援し、安心して働ける環境づくりとして保育園を増やすことは大切だ。しかし、男女ともに家庭で過ごす時間をとり、子育ての時間を大事にできるようサポートをすることで、労働意欲が増す人もいる。プライベートを犠牲にし、身を粉にして働くことがよしとされてきた時代もあったが、仕事のモチベーションに繋がるような趣味・習い事・友人との食事・デート・家族旅行・一人旅など、自由な時間があることで消費は促され、作業効率は良くなり、経済が活性化することも忘れてはいけない。目に見えて稼ぎを出さずとも、社会において大切な役割を果たす活動は、プライベートの時間に行われているのだ。

プレミアムフライデーを導入している企業はまだ3%ほどにすぎない。すでに広がりに陰りも見えはじめている。「プレミアムフライデーなんて意味はない。」「きっとすぐになくなってしまう。」たった3%ほどしか取り組みが行き届いていない現状では、そう感じている人も多いと思う。しかしその割合が、10%、20%と増えていったらどうだろうか。働き方改革自体に否定的にならず、多様な価値観を認め、バリバリ働きたい人も適度に働きたい人も、自分の意思で好きな生き方を選べる環境が広がっていくと嬉しい。周りの目や制度にしばられるのではなく、国民一人一人の意識が変わることで、それぞれに合った多様な働き方や幸せなプライベートを応援・実践していくことが、明るい未来への近道だと感じる。

私の場合は、こういった取り組みが進んでいるおかげで愛を深めることができたといっても良い。職場はお互いに理解のある優しい環境なため、私は毎日ほぼ定時で帰宅し、彼も仕事量を調節しながら働けていた。出会った日から毎日欠かさず3時間は連絡を取り合えたほど、仕事後の時間に余裕を持てたことに感謝している。休暇も取りやすく、土日以外にも二人で過ごす時間を大切にできたおかげで、話はとんとん拍子に進んでいった。たった一つでも事例があれば、その取り組みには効果があったといえるのだとすれば、プレミアムフライデーには効果があったといえる。

私たちは、晴れて夫婦となった。

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