【努力賞】
【テーマ:仕事を通じて、こんな夢をかなえたい】
“地域コミュニティ再生仕掛け人”としての挑戦
兵庫県  宮永幸則  30歳

私は今年の4月から兵庫県三田市農業アドバイザーとなり、滋賀県から住まいを移してきた。滋賀県で農作放棄地を再生し、引きこもりや発達障害の子供たちを受け入れる農業施設の運営を行い、実績を出してきたことを買われたからだった。三田市の農家戸数は約1500戸となっており、阪神南地域でもっとも農業が盛んな地域である。三田市は、三田米、三田牛、三田うど、三田ピーマンといった特産品があるが、都市近郊の強みを生かし切れておらず、生産者の減少によりブランド化にはつなげられていない。県内最大級の農産物直売所は多くの買い物客でにぎわうが、新規就農者増にはつながっておらず、地域農業を守るための抜本的な農業の見直しが求められている。大学院で経営管理修士(MBA)を取得した経験を生かして、「三田市が日本で一番就農しやすい都市」にするために様々なアイデアを提案・実践することが私の仕事だ。

兵庫県三田市は、宝塚市・篠山市などに隣接し、大阪駅から在来線で40分程度という恵まれた立地にある。京阪神地域のベットタウンとして、バブル期には大規模な宅地造成がすすめられ、農地は埋め立てられ、宅地化が進められた。急速な都市化政策が進められた結果、三田駅を起点として南部はニュータウン地域、北部は農山村地域に分断されることになり、両者の交流はほぼない。人口は11万人を少し上回る程度で、市外からの人口流入はストップしており、北部は過疎・高齢化が進み、南部においてもニュータウン地域の過疎化、空洞化が顕著となっている。

私が住んでいる三田市上青野地域は、三田市北部の農山村地域に位置しており、三田市内から車で15分程度の立地でありながら過疎・高齢化が進み、コミュニティ機能が低下すると同時に、耕作放棄地・遊休農地が増加している。また、近年はシカやイノシシの獣害被害が増加しており、個人農家(自給的農家および兼業農家)の離農が進み、耕作放棄地の増加に拍車がかかっている。都市近郊農業の強みを生かした都市住民との継続的な交流、社会問題を解決するための新しいビジネスモデルの構築を進めることとなった。

私は地域住民の協力を得て、買い物難民対策や「地域内再投資力」の向上を目指した「上青野日曜朝市」を2017年6月25日よりスタートした。また、獣害対策作物としてトウガラシや果樹の栽培に着手している。耕作放棄地・遊休農地を開墾し、新しい特産品となる西洋イチジク(ビオレソイレス)やクランベリー等の果樹栽培に挑戦することとなった。それは低木果樹を活用した地域活性化と生業の創出につなげることが狙いである。米に代わる高収益性で、女性でも安易に管理・収穫できる果樹の栽培は、日本の中山間地を活性化するための切り札でもあり、多くの住民を巻き込んでの活動となっている。

どのような手法を用いて戦略を立案し、実行していくことが必要なのかを検討し、皆で進めている。日本の中山間地域が抱えている課題の解決するためのモデルケースとスキームを提唱し、提案していくのが私の狙いだ。なんとも壮大な取り組みだが、私がこれまで取り組んできたことの総決算ともいえるプロジェクトになっており、情熱を注いでいる。また、地域コミュニティビジネスとして、マイクロクレジット、クラウドファンディングを活用した資金調達にも着手している。

限界集落と呼ばれる場所で、地域の人の協力を得ながら次世代を作るための活動を進めている。こうした新しい働き方は、若者らしいクリエイティブな発想と行動力の化学反応を生み出し、地域を変えていくための力になっていくと信じている。

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