【佳作】

【テーマ:さまざまな働き方をめぐる、わたしの提言】
定時退勤するための仕組みを考えよう
東京都 須 貝 誠 50歳

「毎日、夜11時に小学校を出ます。普通の日課です」という先生に出会った。夜11時とまではいかな くても、定時に退勤しない、できないでいる先生は多い。一方で、毎日、定時に退勤できる先生にも出 会った。どうして、このような違いが出てくるのだろうか。

定時に退勤できる先生は、仕事を逆算していると聞く。退勤時間の30分前には、仕事が終わるように 1日の予定を立てる。「何時何分には何を終わらせる。だから、この仕事は何時から始める」と計画する。

退勤時間30分前に終わるようにするのは、突然の仕事が入っても対応できるようにするためだ。何時何 分までに終わらせるなどと計画できるのは、自分がその仕事に何分かかるか分かっているからだ。仕事 にかかる時間を知る事が必要だ。

定時退勤ができないと翌日の仕事に影響が出る。睡眠時間が短くなる。体調がすぐれないまま、仕事 をしないといけない。などの悪循環が起きる。はっきりした確証はないが、睡眠時間が短くなると、人 間は怒りっぽくなるそうだ。怒らなくてもいいことにイライラする。「早く帰りましょう」と言えばいい だけのところを「早く、帰れ!」と怒鳴りつけてしまうなんてことも起きる。残業すれば、学校の施設 費、電気代などもかかる。「提灯学校」と言われてしまうこともある。夜に電気がついているからだ。有 り難くない言葉だ。公立の教員であれば、残業しても残業代は出ないのだ。残業しても良いことがない。

定時退勤できれば、自分の好きなことができる時間が増える。趣味にも使える。定年を迎えて、「何も することがなくなった」という人もいると聞く。定時退勤後が趣味の時間になれば将来、何もすること がないことも起きないだろう。

私の知る下着メーカーの「トリンプ」という会社では、残業を禁止している。もし、誰かが、残業し ていることが分かれば罰金となる。その部署の経費が減らされるそうだ。誰も残業しないにも関わらず、 19期連続収益増の記録を出している。トリンプでは18時になると自然に電気が消える仕組みになってい ると、本を読んで知った。

この罰金制度を設けたのが、トリンプにいた元社長の「吉越浩一郎」だ。吉越は、残業禁止のほかに、 定時退勤できる仕組みを作った。「デッドライン」「がんばるタイム」や「朝早会議」だ。

「デッドライン」とは仕事の締め切り日のこと。トリンプでは、基本は翌日が締めきりだ。制約が何も なければ、本来3時間で終わる仕事を4時間でも5時間でもできる。翌日締め切り、残業禁止となれば 必然的に仕事のスピードを速めなければならない。4時間も5時間もかけてはいられない。よって、定 時に退勤できる。

「がんばるタイム」では、私語禁止、コピーなどでデスクを離れるのも禁止(見回る人もいるとか)、 私語、電話も禁止、接待も禁止。接待もなし。この時間には外部の人が来るのも遠慮してもらっている とのことだ。音を出せない時間だ。この時間が午後に2時間あるようだ。となれば、電話ができないの だから、午前中に電話を済ませておく、コピーをしておくなど計画的に仕事をせざる得なくなる。午前 中にできるだけのことを終わらせようとすることになる。仕事のスピードがあがり、定時退勤できると いうわけだ。

「早朝会議」のこと。8:30から毎日する。時間は、1時間から1時間半。一つの議案が5分前後で 終了する。早い物は1分程度。朝に会議があるので、1日の仕事の計画もしやすい。この会議には「笑 い」「ユーモア」もあり、1日の仕事を楽しくできる雰囲気になるそうだ。今まで書いてきた数字は少々 古い情報だ。2018年現在、変更されているかもしれない。が、基本のスタンスは変わっていないだろう。

残業せずに働ける仕組みを考えよう。

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