【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事を通じて、こんな夢をかなえたい】
「働く」を生きる原動力に
愛知県 星 野 宏 37歳

大学卒業後、自分が何をやりたいのかがわからなく就職はしなかった。数ヶ月アルバイトをしていた が、生活に不安と焦りを感じ、就職活動をして働いてみるが1ヶ月と持たずに退職。自分が社会の中で 取り残されているような感覚だった。やりたいこととできることは違うのかもしれない。なら、何のた めに働かなければいけないのか。誰も教えてはくれなかった

約1年後、やっと正社員での仕事が決まった。自分の中で働く目的を「生活のため」にした。面接で もなぜこの会社で働いたいのかを問われ、生活のためにお金が必要だからと答えたくらいだ。自分が興 味も関心もない業界。3日で辞めたかった。でも、生活しなければならなかったから、目の前の仕事を 覚えた。自分にできることが増えていくと、それなりに面白味も感じるようになっていた。収入がなく なっては困るので、職場内で必要とされるために、どんな仕事も引き受けていた。毎日時間に追われ、 仕事の量は増え、家と職場の往復をするのみの生活。自分がこの仕事をして誰が喜ぶのか、何の意味が あるのか。自分の生活のために働いているのに、自分が何のために生きているのかがわからなくなって いった。

入社4年目のある日。職場の同僚が自死した。自分でも想定していなかったほどの衝撃。葬儀で亡骸を 見ることができなかった。地域での活動もしていた同僚の最期に、関わっていた小学生が多数参列。「何 で?何があったの?」と涙を流しながらそれぞれの親に問いかける子どもたち。その姿を目の前にして、 自分の中で何かが変わった。このままではいけない。何かしなければいけない。とスイッチが入った。

自分に何ができるのかを真剣に考え、手当たり次第に書籍や雑誌、インターネットを読み漁った。メ ンタルヘルスという言葉を知り、学び、関連する資格を取得。そして、現在の職であるキャリアコンサ ルタントという職業と出会った。学習を進める中で、何度も自分のこれまでの人生と向き合い、仕事に ついて、社会について、人生について考えるようになった。多くの方と出会い、仕事や人生についての 話を伺い、その方が大切にしていることを共有させてもらった。

そこで気づいたことは、これまでの私が、いかに自分のことしか考えていなかったということ。自分 がやりたいこと、自分ができること、自分の居場所を作ること、自分の生活費のため。結局自分のこと しか考えていないから、仕事の意味も、社会とのつながりも、自分の存在意義もわからなくなっていた のだろう。自分が働くその先には、必ず誰かがいて、その人の生活があって、その人の家族があり、社 会がある。働くことはきっとそういうこと。お互いに役割を持って、自分たちが生活する社会をつくっ ているのだと考えると、自分の仕事を楽しめるようになり、自分の仕事にやりがいを感じるようになっ ている自分に気づいた。スタートが遅れても、遠回りしても、このことを実感できたことは、私の人生 において大きかった。

現在、縁があって、大学でキャリア関連の講義を担当している。これからの社会を創っていく若者た ちと一緒に、働くことや生きることについて日々考えている。若者たちはもちろんだが、誰にとっても、 「働く」ということが自ら「死」を選ぶ要因になるのではなく、「生きること」の源となるような社会を私は創りたい。

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