【 奨 励 賞 】

【テーマ:さまざまな働き方をめぐる、わたしの提言】
私たち「失われた世代」が組織に再編成される時
北海道 小 野 正 昭 39歳

私たちは「失われた世代」であるとか「ロストジェネレーション」と呼ばれる世代です。辞書を引く と「戦争や貧困、不況などにより行き場のなくなった迷走する若者の総称」とあります。

 

そんな「失われた世代」も、個々人それぞれに時代を駆け抜けて、今や中核として組織に再編成される べき時がやってきました。バブルと共に終身雇用という幻想も弾け飛び、大学や高校を出て就職し、基 本的にはその会社で定年まで働くという生き方は、単なる選択肢の1つとなりました。

「生き方の多様化」というもののリアリティはずっと増していますが、私たちが二十歳そこそこの頃 から、そういった雰囲気の萌芽はたしかにありました。それを強力に後押しするインターネットが普及 し始めたのも、この頃でした。

 

私の職場は、「失われた世代」の組織的な空洞化が著しく進んでいて、大変なことになっています。ご 存知の通り、私たちの世代は、多くの人たちが非正規雇用と呼ばれる雇用形態で働いています。私の職場 はおおよそ非正規雇用者が200人近く働いていますが、それを管理するはずの正社員は数名しかいない のです。当然それでは人手が足りず、非正規雇用者を同じ非正規雇用者が管理しています。「リーダー」 であるとか、適当な呼称をつけただけの契約社員が、正社員と同じ権限で管理業務を行いながら、年収 では倍以上も差がつくという現実があります。残念ながら、私の職場では「これではやってられない」 と辞めていく人間が後を絶たず、部門の維持すら難しくなっています。

 

45歳以上の正社員たちは、待遇面さえ改善すれば離職者が減ると信じています。しかし、私たち「失 われた世代」が “あえて” 組織で働く理由は、実は高待遇を求めて、ではないのではないか。私はそう いう仮説を立てています。

 

私たちの世代は、特定の拠り所を持たず、己のスキルと知恵のみを頼りに生きてきました。長いとこ ろでも3年やそこらで職場を変えざるを得ない状況がそうさせたのです。

 

非正規雇用者を多用し、その場しのぎでやってきた会社が、競争に勝てない時代がやってきました。価 値の多様化や、口コミ文化が定着したことにより、本当に良いモノやサービスが売れるようになり、「不 景気だからしょうがない」と逃げ続けてきた企業が淘汰されてきています。一方で新たに台頭してきた 企業もあります。違いはどこにあるのでしょうか。

 

話を戻しますが、私たちが、1度は拒絶された会社や組織という場所で、“あえて” 働こうとする理 由は何か。それは表面上の高待遇ではないのです。そんなものに頼らなくても、人はそれなりに幸せに やっていけると、私たちの世代は体現しています。「失われた」モノはそんなものではありませんでした。新卒の頃、徹底的に拒否された “会社” と、和解したいと考えているのは、私たちも同じ思いなのです。長い個人戦を生き抜いた己のサバイバル術に敬意を表し、それを吸収し、活かしきってくれる場所を改 めて求めているのです。ある程度の規模感がないと成立しない大きな「ビジネス」への夢をもう1度見 たいからです。

 

働き方改革、という言葉が流行しています。「失われた世代」を取り込み、利益が上がるようにマネジ メントしなければならない立場の人たちに、これだけは伝えたいのです。私たちは、しぶとく、自立心 が旺盛です。そして、散々求人広告を眺めてまいりましたので、応募する段階で、あなた方が想像する 以上に、あなたの会社のまずい部分を嗅ぎ分けます。しかし、孤独に戦い続ける辛さをどの世代よりも 知っているからこそ、組織のありがたさもまた、身に沁みて理解しています。

 

互いにとって幸せな出会いを求めています。いまこそ和解しましょう。しかし、それが望むべくもな いことというのであれば、私たちは自ら起業するでしょう。あなた方が取り込めない、もっと若い世代 と共に。

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