【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
働く意識と生きる目的
総合学園ヒューマンアカデミー大宮校 坂 口 美 純 21歳

世の中にはたくさんの非正規雇用の人たちが働いている。私は一度就職をしたが、現在派遣社員をし ている。私は幼いころから漫画家になるという夢があった。

学生だった私は絵の専門学校に通うのだろうと当然のように思っていたが、現実はそう甘くなかった。


私の地元は瀬戸内海の島で、絵を学ぶ学校も無ければ、画材屋すら無かった。教育ローンを利用し、島を出て進学しようとしたが、教師に猛反対されて専門学校に行くのはあきらめた。


夢への想いはそんなものだったのか、と言われるかもしれない。しかし、実家はとても貧しく、卒業しても返済能力にも不安があったため、周囲の反対を押し切ってまで自分の意志を通すことをしなかっ た。これは今でも懸命な判断であったと思う。


その後、私は地元のリゾートホテルにいったん就職し、正社員として働き、学費を貯めることにした。業務内容は主にレストラン業務だった。早朝から深夜まで働き、体はもうヘトヘトで通勤時間も長かっ た。そのため居眠り運転で何度か事故を起こした。

毎日怒鳴られ、時には手も上げられ、忙しくて絵も描けないし、何をやっているんだと、毎日泣いていた。


しかし、仕事がこなせるようになると頼りにされ、自身が付き、やりがいを感じるようになった。残業をすればするほど手当がつき、働いて金銭を得るという喜びを知った。


そのホテルには社員が少なくたくさんの派遣社員がいた。皆短期間でまとまった金額を作り、海外に 行ったり、将来やりたいことをするための資金にするという。世の中には色々な働き方があると知り、自 分の中の世界が開けた気がした。


ある程度、貯金ができたので退職し、絵の専門学校への入学を決めた。教育ローンを借り、コールセンターで派遣社員をすることにした。学費も生活費もすべて自分で賄うためにたくさんシフトを入れた。出勤日数は多かったが、特に休むことなく会社へ行った。それは当たり前のことなのだが、とても褒め られた。その会社も派遣先が多く働いていて、当日欠勤をする人がとても多かった。

毎回ほぼ同じ人で、会社に来ることが珍しい人もいる。それに私の後に入ってきた派遣社員は二日ほ どの研修後、まったく来なくなったり、連絡が取れなくて切られてしまう人がほとんどであった。


この会社は非常に働きやすい環境で、離職率もかなり低い。直雇用の人達は長い人が多いが、派遣社 員はすぐに辞めてしまう。ちゃんと手順を踏めばよいのに、無断欠席を続け、解雇など社会人としての 自覚が全くないように思う。人が減れば、その分営業成績にも影響が出てくる。これでは真面目に働い ている人間が馬鹿らしくなってしまう。


ではなぜ派遣社員にそのような人間が多いのか。まず、二十代前半の若い女性や既に手に職つけてい る人が副業と派遣登録する人が多い。後者は本業が忙しくなって辞めるという人が多いため、ある程度 しかたない。

だが、会社に一本連絡を入れることすらできない仕事はいったい何なのだろう。前者は、私含め夢が あり、その過程で就労している人や、夢を途中で諦め目的を失った人など。やはり人間何か目的がない と頑張ることは難しいと思う。目的や目標が無いと非常にあいまいで何となく時が流れる。

そのため日常に緊張感がなくなり、「まあいっかの精神」になってしまうのではないか。また目的が あっても、やりたくないからと業務を蔑ろにするのは幼稚だ。かりにも自らが選んだ道ではあるのだか ら、責任を果たすべきだ。


やりたいことの中にも、やりたくないことはある。それを乗り越えるためにも今、目の前のことをしっ かりこなさなくてはならないのではないか。どのような雇用形態であっても、責任感をもって、業務を 行うことは絶対だ。また、小さなことでも生きるための目的を持つことで、自分の意識は変わり、豊か な生活を送れるのではないかと私は考える。

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