【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事を通じて、かなえたい夢】
身近に居る若者達から得る力
栃木県  畔 上 慶 子  45歳

私の家族達は、今この時期 “働く” というテーマの中に居る。夫が転職を考えており、只今転職活動中である。年収も下がるだろうから、娘達もアルバイトを探し、働き始めた。娘達は大学3年生と大学1年生。お金の掛かる時期の夫の転職・・・。大学までの交通費と、お小遣いを自分達のバイト代で賄ってもらう事になった。子供達に苦労を掛けて申し訳ないと、身の置場のない両親をよそに、二人の娘達は、サクサク、バイトを決めて働きだした。長女は女ながら警備員のバイトを始めた。なんでも、将来警察官になりたいからと、自分の夢に近い職種ということで選んだらしいと知る。女の子が?と親として心配になったが、長女にしてみれば警察官の仕事に近いというだけで最高なのだとか。土日も喜び勇んで、バイトへ行く。次女はカラオケ屋でバイトを始めた。中学生から合唱をやっていたのでカラオケは音楽好きの次女には、うってつけなのだ。

若い人達が、こうして働く姿を横から見ていると、大人の私達は元気をもらえる。額に汗して働く若い力に触れると、活力が溢れて来る。転職活動中で、どことなく意気消沈していた夫の目にも、段々と生気が宿るようになった。いつも溜息ばかり吐いて、丸まった背中に悲愴感を漂わせていた事から、家族全員から心配されていた夫なのに、最近は背筋も伸びてシャキッとしている。

社会に元気をもたらすのは、いつの時代も若い人達なのだなぁと思うに至った。ふと外界に目を向ければ、今日も若者達が、どこかで働いている。個々に理由は様々であろうが、その姿は清々しく爽やかであり、気づかぬ内に、中年層にエールを送っている。

私自身も娘達を基点に、世の中の若者達を眺めることで、家事をする毎日にメリハリがついて、少し前より主婦業に生きがいを持てるようになった。社会を作る共同体はお互いに影響しあい、成り立っているのだなと、深く思う。

今朝、面接の入っていた夫は、パリッとしたスーツ姿で出掛けて行った。その後ろ姿を見ると、娘達の事が思い浮び、次いで街で見かけた若者達の働く姿が重なった。一生懸命働く若者達には夢があるのだろう。そして、私たち中年にも夢がある。働くという事は、その夢を手にするための方法なのだ。そう考えると、“働く” って素晴らしいんだなと、しみじみ感じる。

そんなことを考えつつ、節約のための安い食材での手料理を食卓に並べる。次々に帰宅する家族に、「おかえりなさい。」と笑顔を向ける。それが私の仕事なのだ。

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