【 奨 励 賞 】

【テーマ:現場からのチャレンジと提言】
オラ!
三重県  花 井 みさと  46歳

「オラ!」「オラ!」

こんな言葉が日常に飛び交う毎日です。長年働いてきた販売の仕事を思い切って辞め、事務がしたいと一年以上探してやっと働き始めました。いなかにある新しく出来た工場の二代目事務員で事務員は私だけ。

なんだか不安だらけでした。初日から、事務所に「オラ!」と飛び込んで来て驚きました。声も出ずどうしていいのか呆然としました。最初は、一人事務所で弁当を食べようかな。なんて思っていたら「弁当いくよ」。と昼食時間にまた別の人が声をかけに来てくれました。

言われるがままついて行き、会社の食堂に行きました。40代の私は緊張してるけどみな陽気で、ニコニコ。日本人も外国の人も年のとったお爺ちゃんも若い子も男も女も、ミックスでみな座って昼食を食べています。今まで持っていた私の外国人に対してのイメージが全て崩れた瞬間でした。合計30人ぐらいが座りワイワイにぎやかにお昼ごはんをとっています

なんかすごい。みんな仲良さそうにお喋りしてました。そして昼食を食べ終わるとみなお菓子を広げて食べてるのでした。そして始まる5分前には、食堂からみな居なくなり、作業場の前に立っているのでした。

チャイムが鳴ると一斉に金づちの音が現場に鳴り響きました。もくもくとでも、手は早い。そして出来上がった完成品が目の前に積み上げられて行くのでした。早い。本当に早いです。

私は伝票管理や、電話、現場から呼ばれたりとなれない仕事でしたがあっという間に一日が終わりました。それでも、みな事務員さん、事務員さんと声をかけてくれるのでした

私は、自分にいつの間にか心の壁を作っていたのかもしれません。外国の人、年配の人、男の人。知らず知らずに壁を作り相手を知ろうともせずに勝手な思いこみだけで今まで生きてきたんだと痛感しました。それ以来、毎日仕事に追われてますが、オラ!って言われたら、オラ!と返事できるようになりました。片言での会話で子供の話をしたり天気の話だったり、育った国が違っても子育ては一緒悩みも一緒。そんな当たり前のことを気づかせてくれました。一生懸命仕事して子育てしてます。遊びも一生懸命で時には、遊び過ぎて翌日ダウンしたり、休みの前の日が待ち遠し過ぎて、まだ前日なのに休んだり、でも

それでも「オラ!」が毎日続きます。

事務所には毎朝、欠勤電話で、子供が熱や病気の電話が入ります。そんな電話には必ず気にしなくていいですよ。母親優先で。と声をかけてます。どんだけママが仕事仕事と思っても子供や家族の体調が悪ければ頑張ることが出来ません。もしかすると私の考えは会社の考え方と違うかもしれませんが、ママ達に迷わず声をかけます。私もだいぶ子育ては落ち着きましたが、母親です。前の職場でどれだけ子供の病気で休むといった時、肩身が狭く申し訳ないと頭を下げていました。それが辛かったからです。

ある意味ここで働くようになり自分に常に出来ることはなにか?を考え仕事をするようになりました。

あの頃の30人だった職場は、半年で現在100人近い人数が仕事をしています。仕事も劇的に増えていますが、事務員さん未だに私だけです。手が回らないことも多いですが、自分から「オラ!」とこれからも声かけ出来る人でいたいです。

小さなこの職場で、日々皆から学べることがあります。

一歩前進し一歩後退することもありますがそれでも仕事は積み重ねていき私も日々成長していきます。

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