【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事を通じて、かなえたい夢】
気がつけば私の道
岡山県  藤 井 通 子  82歳

本当の幸福って何だろう。働くことはどういうことなのだろう。今迄深く考えることもなく過して来た私、ふと足をとめ考える機会を得た。

ふり返れば、すでに80年余りの長い人生働いて働いて働き続けて来た自分に驚いている。その中で随分多くの人々に出会った。素晴らしい子供達や人々から実に多くの事を学ばせて頂いた。気がつけば自然に自分の道が出来ている。ずっと働きつづけ続いている自分の道、健康で働ける日々を感謝している。

私は若い頃から自分の仕事の他に、次代を担う若い人達のために健全育成事業、何か役に立ちたいと思っていた。ボランティアという言葉を使うのはおこがましく、ほんの少しでも役に立てたらと思っていた。

私のライフワークの出発点ともなり原点ともなったのは忘れもしない2月の寒い寒い朝の出来事だった。あたりはまだすす暗い4時前のことだった。「キーキー。」と自転車のきしむ音に目がさめた。カーテンを少し開けると電信柱の下でポケットから小さな紙を出しそれを見ては小声で何か空に向かって発している。単語でも覚えているのかなと思った。

わずかな光を求め懸命に学び乍らせっせと新聞を配っている。「何て素晴らしい人なのだろう。」寸暇を惜しんで学び働いている。私は心がふるえるような感動を覚えた。あれからすでに長い長い年月が経っている今もあの光景は鮮明に思い出される。「私も何かこの子供達のためにしなければ。」何かが私の中で動きはじめた新しい出発の朝となった。経済的理由や、家庭の事情から進学を断念せざるを得なくなった子供達、働き乍ら学んでいる人達、様々な問題を抱えている子供達の、学びの場そして何よりも気軽に相談出来る場を造りたいと思った。早速我が家の離れを整備し、青少年のための交流の場として解放した。近隣の子供達も多勢集まって来るようになった。講演会、読書会、教育相談会、教材造り、留学生との交流事業、次から次へと新しい企画を造りコーディネイトした。子供達は日々、新しいことを知る喜び、向上心が目ばえていった。仕事の他にはじめた私の仕事、主婦であり母であり子育真最中の30代中端の私、3足のわらじをはいた思いで土日返上の奮闘の日々であった。小さな田舎町、多勢の子供達や若い人達が押しよせて来るようになり母親の学習の場、教育相談の場ともなり、我が家はパンク状態となった。その後、公民館と我が家の連携となり私は講師として公民館活動へも参加することとなった。一つの新しい事をはじめることは、大変な労力と忍耐力が必要であることを知った。子供達が「新しいことを知る喜び。」「自分が活かされて育っていること。」「何をしなければならないか。」次第に自覚していく姿、生々と学び喜びの日々へと成長していく姿を見ることは私の大きな喜びとなった。若い人達が苦しみぬいた時が大きい程それ丈大きく成長し社会に出て大変活躍している様子を知ることは私の大きな大きな喜び。人から学ぶことも働くことから学ぶことも学びの場はいくらでもある。

私は現在、留学生や若い人達の支援、交流相談等ボランティア活動を続けている。

現代は厳しく移り変わっている。変化と対応の時代とも言えるかも知れない。人間関係の希薄さ、ひずみや格差、経済的行きづまり等々「人生一寸先は闇。」何が起こるかわからないそんな時、決して自暴自棄にならず新しい1歩を踏み出す勇気を持ってほしいと伝えたいのです。あせらず比較せず自分に与えられた時間と環境の中で常に軌道修正し乍ら働きつづけていれば自然に自分の道はつくられていくことを若い人達に伝えたい。働くことは、こういうことなのかも知れないとふと思う。

私はこれからも自分の道をひたすら歩み続けていきたいと思う。私の道はずっとずっと続いている。

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