【 厚生労働省 人材開発統括官賞 】

【テーマ:仕事探しを通じて気づいたこと】
Have a nice day!
龍谷大学 農学部  本 岡   涼  22歳

今、日本には世界中から沢山の人々が押し寄せている。伝統文化、食、建造物などの日本が持つその数々の魅力に彼らは魅了され、その客足は留まることを知らない。

そして私はそんな彼らに更に日本を深く知ってもらうため、ツアーガイドとして働いている。

ツアーガイドといえば’ 歴史の紹介や文化の話を観光客にする仕事’ だと私は始めた当初は考えていたが、実際は大間違いだった。事実、神社仏閣の歴史の話をすることももちろんあるが一番大切であり、私が大好きな仕事は地元の人々とお客さんの架け橋になることだ。

なぜ架け橋になりたいかって?


ツアーガイドとして私は彼らにいつも尋ねる質問がある。

「日本で一番好きなことは何?」

そう尋ねるとほとんど100%の確率で彼らは’ 人が好き。すごく親切で優しい。’ と答える。

私は日本人として日本で22年間育ってきた。だからなのか彼らの言う’ 日本人の優しさ’ は当たり前でもあり、あまりありがたみを意識したことがなかった。

しかし、ツアーガイドを始めてから私は日本に存在する言葉なしの優しさと思いやりに気付き始めた。道を譲ったときに軽くお辞儀をすること。みんなが電車を並んで待つこと。夜電車に乗ると駅員さんが’皆様、今日も一日お疲れ様です。’ と車内放送で乗客に労いの言葉をかけていたこと。ガードマンのおじちゃんが英語で「take care!」とツアー客を誘導してくれること。そんな些細な思いやりが日本には沢山存在していること。


そのことに気付いた日、私は日本を支えて働いてくれている全ての人に、精いっぱいの大きな声で「今日もお勤めご苦労様です。ありがとう。」と伝えたくなった。それからというもの私はあることを始めた。それはその気持ちを言葉に出して伝えること。知らない人でもコンビニで少しジュースを買っただけでも「ご苦労様です。ありがとう。」そう言葉にするだけで少しでも自分の想いが伝播していかないかなぁと考えていた。正直、最初は少し恥ずかしいような気持ちもした。でもやっぱり伝えたい気持ちの方が大きかった。


そんなある日、いつも通りツアーをしているとよくツアーで訪れさせてもらうお茶屋のおばぁちゃんが私に話しかけてきた。彼女は英語でお客さんたちと話したいが自信がないとのことでせめて「いってらっしゃい」だけでも伝えたい、とのことだった。英語でいってらっしゃいという言葉は「Have a nice day」がぴったりだ。その言葉をおばぁちゃんに伝えると彼女は少し照れながら私のお客さんたちに「Have a nice day!」と言った。

お客さんたちはすごく笑顔になり、私に「Thank you so much」は日本語でどう言うかを聞いてきた。そして彼らはそのおばぁちゃんに「ありがとう」と日本語で伝えた。

その瞬間、私は確信した。人はこうやって優しさを紡いでいくんだと。自分が優しさや思いやりを発信し続ければこうやってその輪はどんどん広がってゆくんだ、と。そして日本はこうやって沢山の人が思いやりの輪を繋いできたからこそ人が宝として今現在、世界中の人々を魅了しているんだと。

ツアーガイドという仕事を通して ’ 国は人なり’ というこの言葉の本当の意味に気づくことができた私は今日も人と人を、そして国と国を繋ぐ架け橋になりたい。

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