【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事探しを通じて気づいたこと】
脱サイレント・マジョリティー宣言
大学生  ミンミンゼミ  22歳

2019年3月1日、就活解禁日某大手就活サイトでエントリーをしている私に問いかけたい。あなたは、「サイレント・マジョリティーですか?」と。


就活が始まる前に、春休みに実家に帰省し、中学のころからお世話になっている美容室で髪を黒染めした。地毛が少し茶色に近い髪色を烏のような真っ黒にしてほしいと頼んだ。美容師は、黒に執着する私をみて、少し違和感があるように見えたが、オーダーどおりに黒染めをしてくれた。これで、就活がおわるころまでは色落ちしないと言ってくれた。仕上がりを鏡の前で確認していると、いよいよ緊張してきた。


4月某日、面接を受けるために、スーツに身を包み、就活メイクをし、髪型をポニーテールに整え、鏡の前で身だしなみチェックをしている自分がいた。私ならできると自分に言い聞かせ家を出た。面接会場に向かう途中で街中を歩いていると、私の姿をみたサラリーマンが、「もう、就活の時期か。」と言った。なぜだか私は安堵した。The 就活生と認識されるぐらい自分は就活生にみえるのだと。「皆と少しも違っていない。」


実際の面接では、練習したとおりに、ドアを3回ノックし「シツレイします」と言って入室、鞄を置き椅子の横で「シツレイします」と言う。そして、「ホンジツは、ヨロシクオネガイします」と言ってから一礼。その後も質問を順調に答えすべてが練習通りで完璧だった。しかし、「あなたは、当社から内定をもらったら、ほかの企業はどうしますか?」と聞かれ、言葉に詰まった。


家に帰ってきて、無性に腹が立った。「シュウカツをオワリニします」と内定をもらえるように答えるべきなのか、それとも「他社の選考をつづけます」と正直に答えるべきなのか。数日後に結果が届いた。「今後のご活動を心よりお祈り申し上げます」不採用通知のいわゆるお祈りメールを見ながら、ふと頭の中である曲が流れてきた。


似たような服を着て 似たような表情で 群れの中に紛れるように歩いている 誰かと違うことに何をためらうのだろう


欅坂46「サイレント・マジョリティー」


今の私は、サイレント・マジョリティーの歌詞そのものだと気づいた。よくいる就活生を演じることで、内定がもらえるのだと勘違いしていた。そして、自分をよく見せようとばかり努めている自分に嫌気がさしてきた。少しでも、あるべき姿から外れると、それが原因でおちたのではないかと考える自分にも嫌気がさした。私は、心のなかでもうサイレント・マジョリティーなんかじゃないと大きな声で宣言をした。


数日後、某企業の部長面接で、若干圧迫面接のようなものを受けた。私が言う内容に対して面接官は全否定してきた。脱サイレント・マジョリティー宣言をした私は自分を止められなくなり、面接官の話す内容に噛み付いた。面接官は当たり前のことだが私のことが気にいらなかったようで、最後に「就活頑張ってね」と笑いながら私に言った。脱サイレント・マジョリティー宣言をする以前の私だったら、くよくよ悩んでいたかもしれないが、面接を受けた直後はすっきりしたのと同時にお祈りメールを覚悟した。数分後、別室で「面接どうでしたか?」とリクルーターの方に聞かれ、私は「うーん、だめでした」と正直に答えた。リクルーターの方は私を鼓舞してくれた。そして、最後に「もう一度来てくれないか?」と聞かれた。その時は非常に驚いた。家に帰っても、不思議な感覚だった。


結局、私は複数の会社から内定をいただくことが出来た。仕事探しを通じて気づいたことは、脱サイレント・マジョリティー宣言をすることで、自分の心が呼吸しやすくなっていることだ。なんだか、少し自分に素直に生きていくことができるようになった。何歳になっても、どんなことが起きても、脱サイレント・マジョリティー宣言は採択されたままであることをここに誓う。

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