【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事を通じて、かなえたい夢】
変になる
東京都  池 松 俊 哉  31歳

小学生の頃、毎日朝6時からサッカーの練習をしていた。いつも監督が口にする言葉があった。

「ボールをもらうには、人のいないところに走れ。パスを受けた後は、人が想像していることと逆のことをしろ。」

毎日練習を繰り返すうちに言葉の意味がわかってきた。パスを出す人の気持ちになると、敵のいないスペースにパスを出したいから、人のいないところに走る必要があること。自分がボールを持ったら、ボールを奪いに来た相手の想像もしないことをすれば、相手を容易にかわすことができること。これが実践できるようになると、サッカーが楽しくなり、チームも私をより必要としてくれるようになった。

この言葉をサラリーマンになった今も忘れないのは、仕事と通じる部分が多いからである。ボールをもらうための動作は、人の気が付かないところに目を向けて仕事を見つけ、人の役に立つことに繋がるし、ボールを持った後の動作は、自分らしさを活かしながらよりうまく物事を解決していくことに繋がる。そして、それらができれば組織や社会にとってより必要とされる人間になれると思う。

私は今、コンビニの商品開発の仕事をしている。日々変化するニーズに対応するべく、お客さんの思考や行動パターンを把握して、的確にパスを出さなければいけない。そして、全く新しいものを作るときは、人が想像していることと逆のことを考える。私がこの仕事をしていて重要だと感じたのは、日頃から「変になる」ということである。「変になる」とは、「人のやらないことをする」ことである。人のやらないことをすれば、自分らしさが出て人の役に立てるだけでなく、自分にしかない経験をすることにもなる。

どんな有名なスポーツ選手も、人がやらないことをやったから、そこまでになれたのだと思う。即ち、とことん「変」になれば、それが自分にしかない財産となり、より役立てる人間になれるのだ。

多様性の時代だからこそ、他人の「変」を尊重することも必要だ。そして、それぞれが培ってきた経験と知識を織り交ぜることで、より良い仕事と社会を築いていけると思う。

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