【 入 選 】
時々、真剣に考えることがある。それは、正規と非正規の境界線についてだ。なぜ、正社員とパートという区切りがあるのだろう。はたから見ていても、正社員となっておかしくないパートの方も居れば、何故、この方が正社員なのだろうと疑問を覚えてしまうほど、責任を負わず、仕事の殆どをパートや部下に押し付けるだけ押し付ける方々も居る。
果たして、この差は何なのだろう。これこそが会社のあるべき姿であるのだろうか。まるで「給料の安い奴に社員の仕事やらせて自分は甘い汁を吸う」と言う弱肉強食の世界ではないだろうか。
働きの分だけ、きちんと給料をもらう、と言うのは幻想でしかないのだろうか。
世渡りのうまいひとだけが、正社員となり、非正規は報われなさに泣き暮らすしかないのだろうか。
むかし、面接に行き、圧迫面接を受けたことがある。言葉のあらを探すように、こちらから断らせようと仕向けられたこともある。
そして、学歴、年齢を出されることもある。目の前に座る面接官は私より年配の方のようであったが、それでもそう、言われてしまう。
募集要項で見た言葉の数々は何だったのか。「書いてはいませんけど、実はうちは若い子しか要らないし採用しないんですよ」や、「あなたは今まで何をやって来られたんですか? ただ働いていただけ?」などなど……あまりにも、考えずに発言する方が多すぎる。
勿論、それらを非難するつもりはない。彼らにも「わが社にふさわしい」方を採用するという「仕事」があるのだから。
だが、あえて問いかけたい。
その質問、あなたがこちら側の人間ならば受けて、難なく答えられるのかと。
その質問に何の意味があるのかと。
そして、目の前に居る面接官たちが、その会社の顔だと言うのであれば、募集要項に書かれていた言葉は嘘だらけになりはしないかと、酷く心配になってしまう。
もしかすると私が行ったところが、そういうところばかりだったのかもしれないが……。
今、正社員として働くことは難しいと聞く。
しかし、私はそれに疑問を持っている。
面接において、意味のない圧迫面接は恐怖だし、いじめられてきたことのあるひとには気まずさでしかない。
企業は「即戦力で強い人材を」という考えかもしれないが、それはおいおい育てて行けばいいものではないだろうか。
最初から「最高」の人材などいない。長い目で見て、ひとをひととして作り上げていく。それこそが、会社のあるべき姿ではないだろうか。
そうして、いつの日か、境界線のあいまいさが消え、きちんと責任を負うべきひとが責任を負うという、当たり前の世界が来ることを願っている。