【 佳 作 】
私は、障害学生支援コーディネーターになりたい。精神障害者として培った経験を活かし、後輩の精神障害学生達の良き伴走者となりたい。
専門職と言えば、健常者が一般的だが、必ずしもそうではなくてはならないのだろうか?最近は、ピアサポートが普及しつつある。同じ障害を持つ者同士が支え合った方が、障害を経験しているからこそ理解できる部分も多く、健常者の専門家より的確に助言できることも多いと考えられる。
障害学生支援の中でも、特に、日本では精神障害学生支援が遅れている。私自身、昼間の大学に在学していた頃、統合失調症にかかったが、福祉系大学であったにもかかわらず、授業の時、幻聴と現実を一目で区別しやすい、一番後ろのドア付近の席に座りたくても、特別扱いできないという理由で、「優先席」という貼り紙を貼っていただけなかった。そのため、早目に登校し、その席を確保しようと努力したが、授業開始時刻になると、先生が「前へ来なさい」と言い、前方の席に移るまで授業を始めないので、落ち着かない前方の席で授業を受けるしかなく、結局、中退するしかなかった経験がある。最終的には通信制大学に編入し、卒業証書を得たが、昼間の大学に障害学生支援コーディネーターがいたら中退しなくて済んだのではと、今でも悔やまれる。来年4月に障害者差別解消法が施行されたら、障害学生支援は、国公立大学では義務、私立大学では努力義務となる予定で、ようやく障害学生支援も日の目を見るようにはなってきたが、まだまだ精神障害学生は自助努力で頑張らざるを得ない面を抱えている。また、日本には、視覚障害者と聴覚障害者のために筑波技術大学という専門の大学があるが、精神障害者専門の大学は存在しない。和歌山大学には、キャンパスデイケアが設けられていて、精神障害学生がそこを利用しながら学生生活を送っているそうだが、他大学でこのような取り組みを行っている話は聞いたことがない。一人ぼっちの精神障害学生が各大学に点在し、悩みながらも孤軍奮闘しているのではないかと考えると、何とかならないのかと、心が痛む。
精神障害者の障害学生支援コーディネーターがいるかどうかは私自身も知らないが、誰もやっていないのなら、私自身がパイオニアとなってこの分野を開拓したいと、強く感じる。前例がないのは、チャンスかもしれない。現在、私は、昭和女子大学社会人メンターとして、登録させていただいている。精神保健福祉士の資格取得を機に、何か始めたいと思っていた矢先で募集を知り、精神障害の好発年齢は大体大学生位なので、もし、そういう学生さんがいたらお役に立ちたいと伝え、面接をパスした。出番はそう多くはないが、こんな社会人もいるんだと発信している。年齢的に若くないだけでなく、社会経験も乏しいが、通信制だけで大学・大学院修士課程・専門学校と、合計15年7か月の学生生活を送ったので、学生生活だけはプロフェッショナルだと自負している。この長い学生生活の経験を活かし、どうしたら、精神障害を持っていても学生生活が送れるかを、精神障害者学生と同じ目線で共に考え、時には同じ肩の高さで共に行動できる障害学生支援コーディネーターとなりたい。言い尽くされた言葉だが、障害者は不幸ではない。ただ不便なだけである。障害を持っていても、夢を持ち続けられるよう、良き伴走者として精神障害学生支援を支えていきたい。