【 佳 作 】

【テーマ:私が実現したい仕事の夢】
私が実現したい仕事の夢
千葉県 宮内智子 45歳

「働くってなんだろう…」まさしく私が小学生に向けて話すテーマである。

私は求職者から相談を受け、就労支援を行うキャリアカウンセラー業務に13年間従事している。連日、自分の方向性が解らず、悩み、立ち止まってしまった若者を沢山見てきた。若者たちとの相談業務で疑問に感じることは「なぜ働くのか」の問いに答えられないことである。そして感じたことは早期から「働くとは…」という問いを自分の頭で考える機会が必要だということであった。キャリア教育における早期導入の是非は、社会でも議論されているところではあるが、早い時期から自分の興味関心は何かを意識し、多様な経験を意欲的に積むことにより、自分なりに「働くとは…」の解がでるのではないかと感じていた。

そんな折、小学生の息子の担任から、キャリア教育の一環で、働くことをテーマに、講師として話しをしてくれないかとの依頼があった。私が就労支援業務に従事していることを知ってのことである。当初、テーマの大きさに恐れ入り快諾出来なかったが、目の前で悩む若者たちの話を聴いている私ができることの一つに、「働くとは…」と自分の頭で考えるきっかけを作ることが出来るのではないかと思い、引き受けさせていただいた。

「なぜ働くのか」この言葉は大変深い言葉であり、小学生達にこの質問をすると「生活するため」と直ぐに答えが返ってくる。次に「働くってどんなイメージ」と問いかけると「辛そう、やりたくない、大変」と大半が負のイメージだ、なぜだろう。

自分自身を振り返ると、子どもたちへお金を稼ぐ大変さを話すことで、世の中の厳しさを伝えている側面があった。そこからか、子どもたちは「働くことは辛いこと。お父さん、お母さん大変そう。大人になるのはいやだな…」と考えてしまうのではないだろうか。だからこそ、子ども達に、働くことは辛く厳しいことだけではなく、自己の成長や喜び、やりがいを感じることが沢山あると伝えたいと考えている。働くことイコール収入を得ることには変わりはないが、大人たちは決して生活のためだけに働いている訳ではない。仕事を通して人と人が繋がり社会を形成している。学校でも係分担があり、それぞれが役割を全うすることで学校生活は正常に機能している一つの社会だと伝えると、子ども達は大きく頷きながら、社会の仕組みや仕事の役割を理解してくれた様子であった。

小学生は大人になるまでの膨大な時間がある。大人になるまでの時間が準備期間で、社会へ羽ばたく学ぶ場として学校の役割がある。多様な教科を学ぶことで、学ぶ方法が身につき、自分がどのようなことに興味があり、何が得意なのか、向き不向きをも知ることができる。更に、集団行動や他人とのコミュニケーションの方法を学ぶことで、柔軟な思考を身につけることができる社会でもある。これこそが学ぶ理由であり、将来の礎づくりなのだと私は思う。そしてその準備期間に、「働くとは…」を深く自問することにより、自分の進むべき道が開かれるのではないかと、私は考えている。

授業終了後に、子どもたちから感想コメントを提出して頂いている。そのコメントの中に私がこの活動を継続して行っていこうと決心した言葉があった。

「大人になるのが怖くなくなりました。これから自分が何に向いているか、いろいろなことを体験しながら、ゆっくり自分に合う職業を見つけていきたいです。大人になるのが楽しみです。」

大人になりたくないと言っていた小学生が、講義を通じて自分の将来にワクワクし、目をキラキラしながら語る姿は私の大きな喜びとなった。「あらゆる可能性に満ちた小学生」に心からエールを送り続けることに大きなやりがいを感じると共に、キャリアカウンセラーという仕事に誇りを感じる瞬間だった。そして私の夢である「全ての小学生に無限なる可能性がある」ことを伝えていく活動を、今後も続けていきたいと思うのであった。

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