【 努力賞 】
【テーマ:仕事・職場・転職から学んだこと】
転職から学んだこと
宮崎県 あい 39歳

家庭の事情で進学を断念した私は、高校を卒業して直ぐ働く事となった。

会社の経理部に配属され、そこに3年半務めた。経理の仕事は、高校で取得した資格も活かせ、やり甲斐も感じていた。まだ若かった私は沢山失敗もしたが、良い上司に恵まれ少しずつ成長していく事が出来た。

しかし、1年が経ち、2年が経ち、仕事にも慣れてくると心のどこかに疑問が生まれてきた。その気持ちは日に日に大きくなってくる。それは「今の仕事は自分が本当にやりたい仕事なのか」という自分への問いかけだった。答えは―「NO」

「もう一度勉強したい」そう強く思った。そして「どうせ勉強するのならば全力でやりたい」という気持ちにもなった。私は、自分の中で「絶対に無理だろう」と諦めていた看護師を目指す事にした。

たいした役にも立てないうちに会社を辞める事は大変心苦しい不安も大きかったが、私の心は前を向いていた。

退職して後が無くなった私は受験勉強に力を注ぎ、何とか看護学校へ入学する事が出来た。それと同時に看護助手として病院で働き始めた。学校は定時制で、働きながら学ぶ事となった。そして仕事で得た収入を学費に充てた。

畑違いの仕事に就き、ゼロからのスタートだった。右も左も分からぬまま始まった新しい仕事。苦しい時も沢山有ったが全てが充実していた。

「これが私のやりたかった仕事だ」と胸を張って言える気分だった。

五年間の学びを経て、正看護師の国家試験に合格する事が出来た。欲張りな私は、在学中に結婚、出産し一年休学をした為、実際は6年間掛かった。そして28歳の時に2歳になった息子と夫と一緒に卒業を迎えた。

私がここまで来るのにとても遠回りをした様に思えたが、働いているうちにそれらの経験は決して無駄ではなかったという事に気付かされた。

会社で働いた経験、勤労学生としての経験、結婚・出産をし、妻と母になって知り得た事、育児と学業の両立、それら全てが看護師として働き始めた時にあらゆる場面で私を支えてくれた。それは、患者さんとのコミュニケーションにも大いに役立ったし自分の自身にもつながった。

現在は育児のため仕事から離れているが、時々ではあるが小児病棟で子供達と触れ合う活動をさせてもらっている。

再び働く日が来た時には、この今の時間もきっと何かの役に立つだろうと思う。その日のために、私は今の生活を大事に過ごしたいと思っている。

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