【 努力賞 】
【テーマ:仕事・職場・転職から学んだこと】
仕事・職場・転職から学んだこと
福岡県 堤和秀 52歳

今年の3月に早期退職した。これまで30年間、ずっと教育業界に携わってきたが、少子化の影響で生徒は急激に減少し、希望退職を募ることになったのだ。「希望退職」や「リストラ」という言葉は、これまで、新聞やテレビなどで時々報じられていたが、どこか他人事のように思えて「この会社の人たちはかわいそうだな」と同情していた。それがまさか自分の身に降りかかるとは思っても見なかった。私も52歳なので、定年まであと8年である。残りの人生をどう生きるべきかを真剣に考えた。退職するか、このまま残るかを考えた時、明るい将来が展望できなかった。ならば、いっそのこと、この機会に退職して、新しいフィールドで自分の力を試すのもいいのではないかと思い、退職の道を選んだ。

しかし、退職後の道のりは決して楽なものではなかった。最初は軽く考えていた。「景気も上向いているようだし、企業の採用意欲も高くなってきているようなので再就職は割と簡単に決まるだろう」と高をくくっていた。ところが、就職を希望する企業に履歴書・職務経歴書を送っても、ことごとく落とされた。サポートしていただいていた就職支援センターによると、50歳を過ぎると、面接まで進める確率は10%程度とのことだった。つまり、その人がどんなに有能であったとしても、単に年齢だけで落とされるのだ。こんな理不尽なことはない。履歴書や職務経歴書にきちんと目を通してもらって、その結果落とされるのなら納得もできる。だが、現実は目さえ通してもらえない。ほとんどの企業は、採用に当たって表向きは「人物重視」をうたっていても、その実、年齢や性別で落としているのだ。

結局、4月から7月までの4か月間で40社ほど応募し、面接まで進めたのがたったの3社だった。最初の2社は2次面接で落ちたが、最後の1社は2次面接をクリアして、内定をもらうことができた。競争率はなんと40倍弱だった。中高年の再就職の厳しさをつくづく思い知った。私は面接試験の時に、必ず面接官に、「何社も書類選考の段階で落とされて、ほとんど面接さえ受けさせてもらえません。今日こうして面接にお呼びいただいたことに大変感謝しています」と伝えた。それは偽らざる正直な気持ちだった。面接で落とされたとしたなら仕方がない。単に自分がその企業と縁がなかっただけのことだ。残念ではあるけれども、面接をしてくれるだけでもすばらしい企業だと思う。年齢や性別に関係なく、本当の「人物重視」で採用する企業は、将来きっと伸びると思う。

私は8月から、新しい職場で働き始める。新しい職場は損保業界で、これまでの教育業界とは全くの畑違いだ。したがって、すべての仕事を一から覚えないといけないので結構大変である。だが、「お客様のために」という基本マインドは共通していると思う。常に相手の立場に立って仕事をする姿勢は、どんな仕事だって変らない。私を必要としてくれたこの企業のために、私の残りの人生をかけて一生懸命働いて御恩に報いたいと思っている。

最後に、これから就職活動する人に伝えたいことがある。それは、「自分に自信を持ちなさい」ということ。よく、何十社と受けていずれも不採用になり、自分に自信を無くす人がいるが、決して自信を無くす必要はない。単にその企業と縁がなかっただけのことだ。「この企業は人を見る目がないな」と軽く考えて、次の企業にチャレンジすればいい。必ず自分をきちんと評価してくれる企業がいつか現れるはずだ。また、仮にその就職先が意に反して、希望する職種ではなかったとしても悲観する必要はない。私も30年前、第一志望の職種に就けず、考えてもいなかった職種に就いたが、いざ入社してみると、これが意外と面白くて、とうとう30年間勤めてしまった。自分でも驚いている。天職と適職は違う。自分が本当にその仕事に合っているかどうかは、実際に働いてみないと分からないものだ。自分に自信を持って就職活動してほしいと思う。

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