人材紹介・職業紹介の仕事をしていると、一番の問題は、年齢的制約があることだ。
もちろん、企業の求人募集で年齢によって差別することは法律で禁止されているが、実際の現場では、年齢が一種のバリアになっていることにしばしば困惑する。
直接、求人条件に年齢制限が書いてなくても、企業の採用担当者は、付き合いのある人材紹介業者に内々で、欲しい人材の年齢レンジを提示するのは極めて普通のことだ。
また、雇用対策法や高齢者雇用安定法にもいくつかの例外規定があって、抜け道のようになっている。
例えば、65歳定年の会社が、65歳未満を上限として求人募集できたり、組織の年齢構成のバランスを図るという理由で、若年者限定の募集ができたりする。
この為に年齢制限が残り、労働人口構成が固定化している。
その結果、若年労働力の不足の一方、再雇用はあるが、定年退職などで、一律に退職してしまうため、身体的・精神的には十分な能力がある中高年労働力が、十分生かされないことになる。
確かに企業が成長発展のために、「少しでも良い人材」を求める考えは理解できるが、年齢を一律に人材の資質として考える時代ではないのではないかと思う。
年齢は、経験・知識・身体能力・精神能力と異なり、それぞれの個人が努力して変えられるものではない。同じ年齢でも、個人によって大きく資質は異なる。
そこで、バリアフリーが障害者や高齢者等の社会的弱者のために、物理的障壁を取り除く考えや仕組みであることと同様、あらゆる社会的システムで、年齢による制約を無くすエイジフリーの実現が私の夢だ。
成長や老化の生物的進行は人それぞれによって違うから、入学、就職などの社会事象に合わせて、一律に年齢で固定することは無理がある。個人にはストレスとなり、社会的にはロスが多い。
逆に、エイジフリーの考えに基づいて、個々人の成長や進歩に合せた柔軟な社会システムにすれば、資源の一時集中的な消費を防ぎエコになる。
義務教育に対する学齢の考えを止め、大学入学センター試験ではなく、高校卒業資格とし、就職も新卒一斉採用でなく、必要な人材を必要なタイミングで採用する。 定年も定める必要はなく、個々の仕事の職務定義に従って必要な資質の人材を雇い入れ、求められる成果を達成できなければ、降格や退場となる。
一定品質の商品を大量生産して大量消費する時代は、無駄も多くものづくりの現場でもすでに過去のものだ。まして個性の違う人間の場合は、個人を社会システムに合わせるのではなく、社会システムを、個々の人間の個性に合わせる仕組みを作る方が効率的だ。
教育分野におけるエイジフリーは、文科省の勧める国際バカロレアプログラムの普及に期待するとして、産業界でのエイジフリーの普及・浸透を進めたいと思う。
エイジフリーを促進すれば、人材流動化が進み、働ける中高年の活用が一層進む。
少子高齢化の問題の中で、高齢化による熟練労働力不足の解消に繋がるのと信じている。