【 入 選 】

【テーマ:非正規雇用・障害者雇用で訴えたいこと】
やっぱり面倒な存在ですか?
福井県 円花 32歳

「やっぱり障害者は企業にとって面倒くさい存在なのかな」テレビを見てそう思ってしまった。障害者雇用で企業で働いている私自身が。

障害者と一緒の職場でよくあるトラブル、あなたならどうするという内容の番組だった。身体障害、うつ病、発達障害といろいろなケースがでてきたが、発達障害の事例が気になった。発達障害がある人は物事をストレートに表現することがあるので周りの人がドッキリすることがあるという。課長の送別会で課長にひとこと言うシチュエーションで、「課長のネクタイは悪趣味です」と言ってしまい周囲が凍り付いている。あなたならどうするか。当事者にどうして欲しいか聞いてみると「後から教えて欲しい。その場で言われるとパニックになってしまう」と言う人もいれば「その場で言って欲しい。忘れてしまうから」 と、人それぞれだった。発達障害ではない私からみると「けっこう面倒くさいなあ…」
と思ってしまった。ポロッと口にだしたそのとき、もしかしたら私も会社からそう思われているのかしら、と哀しみが湧いてきた。

私の障害は、うつ病。障害者手帳を取得して今は小売店でアルバイトで働いている。私の店は社員の入れ替わりが激しい。社員や店長が代わるたびに私は自分の症状を説明していたが、ひとりでやるのは難しいと判断した。そこで、人事の方とも相談の上、店長が責任を持って新しい社員に説明をしていただくことになった。

ところが、A店長が次のB店長に、引継ぎの内容を一部忘れていた事件があった。そのため休日希望のことでトラブルが起きてしまった。私は「いままで頑張って説明してきたものが無駄になった」と怒りがこみ上げてバックヤードで大泣きした。

その後、私とB店長、本部の人事担当者、障害者雇用サポート団体の私の担当者4人で話し合いをした。そのとき私はこう話した。「店長は先日『パートやアルバイトをいれて30人もいるのだから、全員のことは把握できない』とおっしゃっていましたけれど、障害者雇用はサポートが必要だから別枠なんです。必要ないのなら、一般雇用で入っています」

でも、あのテレビを見てB店長の気持ちが分かった気がした。確かに全員把握は大変だし、めんどうなことは多い。私も細かく要望を出している。目配はできないとか、休憩時間を決まった時間に入れて欲しいとか。

やっぱり、障害者は企業にとって面倒くさい存在なのかな。障害者雇用で働いている私自身がそう思ってしまった。それが哀しかった。

私が障害者雇用にもとめること。それは「障害者自身が負い目を感じずに働けるようにしてほしい」。障害を持っている人に対して生きていればそれでいいと家族や周りの人は言うけれど、それだけじゃいやなんです。私たちだって社会の役に立ちたいんです。

そしてそのためにも、障害への知識を持って欲しい。私も発達障害をよく分かっていなかったから、面倒だと思ってしまったのだ。知識がないのに法で決まっているから受け入れるだけではトラブルが多発し、障害者が「ここでは働けない」と思ってしまう。うつ病の人はどんな考え方をしてしまうのか。発達障害がある人の特徴はなにか。知識があるだけでも大きな違いがあると思う。お互いが気持ちよく働いていくため にも、これは大切なことだと私は思う。

「障害がある」ということは決して「働けない」「働く能力が無い」という意味ではない。自分で言うのはおこがましいが、私は店の力になっていると実感がある。店側にしても、私を必要としているからこそ雇用していると思っている。障害者だって労働力なのだ。その力をのびのびと発揮できる世の中になって欲しいと願っている。

戻る