【 佳 作 】
「保健室のお姉さん」、そう私は呼ばれています。
私は、従業員約600名の中小企業の総務部労務グループに所属する企業内社労士です。主な仕事は、社会保険手続、給与計算、メンタル不調者対応、産休・育休者対応、勤務状況チェックなどなど、THE労務な仕事です。
もともとおせっかいな私は、とにかく気になったら、部署・役職問わず、ド直球で、体当たりでぶつかっていきます。勤務状況チェックをして、「この人心配だな、この部署大丈夫かな・・・」と思ったら、簡易ストレスチェックも取り入れつつ面談をし、本音を引き出し、上司部下の関係性の修復や、職場環境の改善を行ってきました。600人の従業員一人ひとりの本音を正面から受け止め、心に寄り添うように心がけてきました。
もちろん、口ばかりではなく、正しい知識を持って、従業員一人ひとりの心に寄り添うため、メンタルヘルスマネジメント検定試験勉強や産業医さんとの交流を通してメンタルヘルスを一から学び、健康に働ける仕組み・制度を率先して作るために、衛生管理者資格を取得して、安全衛生委員会の運営も行っています。
おそらく、おせっかいさとこだわりが功を奏したのでしょう、いつのまにか、「保健室のお姉さん」が浸透していきました。
平均年齢32歳、若さをうりにまさにベンチャー企業らしく前だけを見て走り続けてきた会社であるためか、様々な制度が整っていません。
とりわけ、「お母さんとなる」を応援する制度はまだまだ整っていません。
現在、7名の女性従業員が、産休・育休中。
それに続けと、制度が整っていない中での出産ラッシュ再び到来・・・。
私自身、「お母さんとなる」を経験したことがあるわけではないですから、できることとしたら、あくまでも情報提供と心の声の聞き取りぐらい。
ルールが何もないからこそ、産休・育休中における社会保障制度に関する情報の提供や、会社とのつながりを求めるたくさんの声に応えるべくして発信する会社情報の提供をタイムリーに行い、個々人の働く女性としての未来像、母としての未来像の両方と正面から向き合い、心の声を聞くことに徹しています。
一方で、「お母さん」となり、「社内のお母さん」として戻ってこようとする従業員は、自分の経験を踏まえて『こうあれば良かったのに・・・』と思う事柄を遠慮なく発信してくれます。例えば、時短勤務となった場合の給与体系についての不満や、土曜日出社をしなければ社員として認めてもらえないという正社員の定義についての疑問など。
遠慮なく発信するのは、下のメンバーたちに同じ苦労をさせたくない!という思いや、下のメンバーのために自分の意見や思いを活かして、新しい制度を作っていきたい!という思いがあるからだと、お母さんの優しい笑顔である女性従業員がそう語ってくれたことを鮮明に覚えています。
「お母さん」となった従業員が、「社内のお母さん」として戻ってくるまでを応援する制度を生み出していくには、たくさんの「社内のお母さん」の実体験に基づく声や、会社をより良くしたいと思うたくさんの声が必要、そういつも感じています。
男女問わず、【健康に、素敵な笑顔で、美しく働ける環境】を創っていくことが、女性の働き方改善への大きな一歩になると、私は、信じています。
そして、従業員が個々の経験を共有し合い、知恵を出し合い、新しい制度を生み出していくことが、【健康に、素敵な笑顔で、美しく働ける環境】への近道だと思います。
企業内社労士として、全従業員とともに、【健康に、素敵な笑顔で、美しく働ける環境】創りに邁進し、「社内のお母さん」を増やしていくことが、私が女性として頑張りたい仕事です。
そして、いつの日か、私自身が、「保健室のお姉さん」ではなく、「保健室のおばちゃん」と呼ばれる日が来ることでしょう・・・。