「仕事は楽しいものじゃない。辛いことばかりだ」
私が学生の頃にお世話になったキャリアセンターの先生がよく言っていた言葉だ。
仕事一筋の両親にも「毎日が戦いだ。大変なことばかりだ」と、言い聞かされたものだ。
おかげで、就活をしていた私の中で『社会=地獄』という構図ができあがった。
内定が決まり、就職をするにあたって、私の中で2つの思いがあった。
一つは、どのような仕事であれ、楽なことはない。辛いことも乗り越えていこうという奮起する気持ち。
もう一つは、仕事が大変であるならば職場環境を整えて、少しでも業務や気持ちの負荷がかからないようにすれば良いのではないか、という前向きな気持ちであった。
どちらにせよ楽観的な考えに変わっていた。社会に出ることの期待が少なからずあったからた。
しかし、今年の4月。入社式が終わり、大先輩たちがずらりと並んでいる目の前で新入社員の挨拶のとき、今でもよく覚えているが、なぜか私にはみんな敵に見えた。
当初、名前も顔も知らない人ばかりであったが、会社の雰囲気を察し、職場環境が大きく変わることはないだろうと感じていたのだ。
キャリアセンターの先生や両親が言っていたように、毎日のように大変なのかもしれないと、頭の中でマイナスなことばかりがぐるぐるとまわっていた。
部署の配属をされて自分が会社の人と多く関わる仕事になると知ったとき、いかに関わりを最小限にするかを考えていた。人が大好きな私が、関わりを拒否しようとするなんて、自身が驚いた。
仕事が始まってから一週間が経った頃、「この人と仲良くしていきたい」と思える人に出会えた。もちろん仲良くするとは、友だちのようにではなくて仕事がしやすくなる仲間として上手くやることだ。
入社してから人と接しようとする気持ちが薄れていた私にとって、その人との出会いはまさに転機であった。いつの間にか消極的な思いが、どこかにいっていた。
密かに、自分の環境を変えていこう。周りも動かしていくのだ、という一種の反抗心が芽生えていた。
もちろん、大きく周りの環境を変えるようなことはできない。徐々に変えていこうと考えていた。
私にとって環境を変えることとは、人とコミュニケーションをとっていくことであった。「職場は毎日通う場所であるのに、胃が痛くなるような環境ならば体がもたない。自分で通いたくなるようなところにしよう」と考えた。
それから私は、他部署の人を中心にコミュニケーションをとり始めた。年齢や職位を壁に感じていたのでは、環境を変えることはできない。
入社してから3ヶ月。私は職場の楽しさを学んでしまった。
仕事は決して楽しいものではない。ただ、円滑な業務がこなせる。これは自分にとって大きいことだ。職場が楽しいのであれば辛いことも楽しくなる。 これからも少しずつ仕事がしやすくなるように、環境を変えていくことだろう。