私は、就職氷河期の最初の頃に新卒の時期を迎えた年代です。そして、転職回数の多い社会人生活を送ってきました。八年間勤務した会社もありますが、一、二か月で辞めた会社もあり、そんな短期間で辞めた会社も含めると転職回数は十くらいになるかもしれません。そんな、数多い転職経験の中でも、半年ほど前までに勤務していた会社では、本当に貴重な出会いをすることが出来ました。それは、その会社の中で働いていた営業担当の男性とのかかわりだったのです。
その男性は私の教育係を自ら買って出てくれたのでした。
もちろん、事務員だった私は、事務の流れは他の女性から教わっています。しかし、商品の事や、事務所の中での仕事の段取りの仕方、営業さんとの連絡の取り方や仕事の心構えなどを教えてくれたのです。その会社は、建築材料の卸会社でしたので、建築現場にまで連れて行って、商品がどんな場所に、どんな風に使われているかみせてくれたりもしました。また他にも、商品の展示会があるというと休みの日でも一緒に行ってくれて、通常の勤務の時には説明できないことまでも教えてくれました。
本来ならば、こういったことは新卒の時に教わっておくべきことかもしれませんが、それまでの私は社員が十人くらいしかいない小さな会社ばかり勤務していたので、そう言う事は教わったことがありません。規模の小さな会社ほど、新入社員教育まで手が回らないようでした。もうすでにその時、社会人歴十五年になった私には、新鮮なことばかりだったのです。
その人は、「この会社にいる間は、ずっと勉強し続けて欲しい」と言い、「お前が成長してくれたら、自分が楽になるから教えてる」とも言っていました。
時には人前で怒られることもありましたが、その人への信頼感からか、嫌な思いをすることはなかったのです。教えてくれる時の熱心さが私には伝わってきていたのでした。また、一日一日、成長していく自分を感じるのが楽しくもあったのです。
人間関係からくるごたごたで、その会社を辞めざるを得なくなった時は、仕事が好きになっていたこともあり、その人の前で泣きました。それまでの転職ではわかなかった感情でした。
今現在は、扱う商品は違うもののその時の会社でしていた仕事と同じ仕事ができる会社に転職したのです。それまでの転職では、「とにかく事務の仕事が出来ればいい」と考えていたのとは違う気持ちで会社選びをしたのです。
その人との出会いは「働くということは、一日一日成長していくことなんだ。そして、その組織や、その中に働いている人に利益をもたらして、自分の生活を成り立たせていくことなんだ」ということを勉強するものでした。
今現在、働き盛りの年齢を迎える中てでも、日々自分を成長させていきたいと思っています。