【努力賞】
【テーマ:仕事を通じて、こんな夢をかなえたい】
ヘミングウェイ作『移動祝祭日』のごとく
兵庫県  福志えり  50歳

もし、幸運にも、若者の頃、パリで暮らすことができたなら、その後の人生をどこで過ごそうとも、パリはついてくる。パリは移動祝祭日だからだ。

かのヘミングウェイの言葉である。最近この言葉が頭から離れない。

小・中学校の司書として二年前から勤務している。教員免許はあるが、司書の資格はない。一年目はかなり戸惑いながら仕事をしていた。そこで、昨年は司書の勉強をすべく大学の通信教育で免許を取得した。

現在、学校では読書とともに‘調べ学習’で図書室が学校の情報センターとして機能することが注目されている。子供達が自ら課題を見つけて解決する力を養う為である。それが、これからの厳しい社会での生き抜く力に繋がるからだ。

私の頃には意識しなかった調べ学習ということもあり、最初は身構えていた。が、考えてみれば、日常生活で疑問に思うことは多々ある。それをそのままにしているのが常となってしまっている。指導する私こそが変わらなければ、始まらない。

図書室で疑問に感じたことを調べてみる。巷に咲く花の名前、今朝目の前をかすめた昆虫。行事や祭りの由来などなど。調べ出すと、関連した他のことにも興味が広がり、より一層図書室で好奇心を養いたくなる。なんといっても疑問に感じている事柄を解決することで得られる爽快感がある。これは大人も子供も一緒であろう。

子供たちと一緒になって本を引っ張り出して調べる手助けをしはじめた。探し求めている事柄が見つかった時、目は輝きに満ちて、声も大きく

「先生!見つかった〜」

と、ページを開いただけでお宝を発見したような騒ぎである。こんな宝探しをすれば、また調べたり確認したり。本を手に取るのが興奮に包まれるようである。

私は、と言えば子供たちの興味に応えるように、本を探せるよう導くことが大切だ。司書資格で勉強したことが即、実践として役立ってきている。該当する本にたどり着けるように、ヒントを出して子供の持てる力を育てていく。なんてやりがいのある仕事なのだろう!

「この本!この本の、ほら、ここに載っているよ」

と言ってしまいそうになる。それを発見させる手伝いをしなければいけないのに。そんなはやる気持ちを抑えて、調べものに図書室は「宝箱」と思ってもらうことが何より大切だと感じるようになった。

?(疑問)を感じたら図書室へ。そして様々な本の頁をめくってめくって、、、。ついに!(発見)した時の気持ちを大切にしたい。教室で回答できたのとはまた違った、そう宝探しのような興奮が待っているのである。

初めの一歩は疑問に感じることや気づくこと。そういったことに敏感になってくると、多くのことが気になり出し、調べることも増えてくる。何か疑問を感じたならば図書室だ!こんな小学生・中学生時代を過ごしたことのある子供たちは・・。

そう、そこでヘミングウェイの『移動祝祭日』を思い出したのである。

もし、小学・中学時代に調べ物をするのが宝さがしのごとく感じたのであれば、どこにいても、大人になっても何か疑問に感じたら宝物を掘り当てられるよう図書館はついてくる。と。

そんな探求心のある人になって、社会で生き抜く力をつけて欲しい。図書室がより使いやすくなるよう、子供の目線や取りやすさを考える毎日だ。移動祝祭日とならんために。

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