あなたは誕生日プレゼント、クリスマスプレゼントをもらったことがありますか?もらった時、大喜びしましたよね。でもプレゼントをもらったあなたと同じように喜んでいた人が、すぐそばにいたはずです。そう、プレゼントを贈った人です。与えられる喜びと、与える喜び、どちらが大きいのでしょうか?還暦をとうに過ぎてしまった私ですが、振り返ってみると、大喜びする子供や孫あるいは友人を見つめる、与える喜びの方が大きかったように思えてなりません。
仕事を始めるということは、与えられる喜びから、与える喜びへの大きな転換点のひとつと言えるのではないでしょうか?消費者は、満足を得るため喜びを得るため、商品やサービスを、お金を出してでも購入するのです。会社が成り立っているという事は、働くという事は、誰かの役に立っているという事でしょう。業種、職種を問わず、会社の大小に関係なく、働くという事に貴賤はなく、すべての仕事が社会に貢献するという大きな役割を果たしています。
私は今、いわゆるリタイヤ組です。30年間、専門学校で働いていましたが、その半分の年数を学生の就職支援に携わっていました。学生と企業の間に位置し、学生と企業を様々な方法で結びつける仕事です。
その学校で担任をしていたころ、今はもう40歳をこえますが当時19歳の女子学生が虫垂炎で入院しました。お見舞いにも行きましたが、「笑うとお腹が痛い!」と言って笑っていた幼さの残る明るい子でした。虫垂炎ですからたった一週間の入院です。退院したあと彼女は言いました。「私、絶対に看護婦(現在の言い方は看護師)さんになる!」。話を聞くと、入院中の看護婦さんの優しさにあふれた、親身な心配りに感動したとのことです。しかしながら、彼女が通っていたのは、看護系にはまったく縁のない学校です。卒業後、彼女は病院に住み込みで就職しました。夜は看護学校で学びました。そして見事、看護婦になる夢を実現したのです。
看護婦さんの優しさを、素直に充分に感じ取った彼女を、そしてそんな看護婦さんになって患者さんに接したいと思った彼女を「優しい子だなあ」と思いました。でも、優しいだけでは看護婦にはなれなかったと思います。彼女は優しさと同時に、歯をくいしばって夢を実現するという強さも持ち合わせていたのです。優しいから強いのであって、強いから優しい。「優しい」と「強い」は同義語だということを、彼女から教えてもらいました。
つい最近も彼女と話しました。大きな病院の看護婦ですから、数多くの人のご臨終にも立ち会ったという話になり、「もう、慣れたのじゃない?」と聞くと「私は慣れる事ができないんですよ」「することが多く、泣くひまはないのですけど」。みょうに生々しく大変な仕事なんだなあ、と思いました。彼女は今、3児の母親で仕事も続けています。
プレゼントの話と、看護師になった卒業生の話から、働くって何?の答えの糸口を教えられます。一つめは、看護師になってからも、たくさんの壁があったでしょうが、勉強をしながら成長し、なりたい自分になった事。二つめは、病気で苦しむ患者さんを心身ともに支えるという、だれかの役に立つことが出来た事。三つめは、夫君と二人三脚で、お金のやり繰りをしながら、3児を育て上げた事。
言い換えると、自己実現、社会への貢献、経済的自立ということでしょうか。
30年間の学校生活を振り返ってみますと、教師?教える師?・・とんでもないと思います。学生に教えるより、学生から教えられる事のほうが断然多かったです。
リタイアした後、今まで縁のなかった世界を知りたいと思い、留学生のキャリア支援に取り組んでいます。それと、障がい者施設で生活支援補助のお手伝いをしています。
これからも、新しいことに注目し、人の輪を大切に、少しずつでも学んで、優しく強く生きていきたいと思っています。