【努力賞】
【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
人生に必要なことの大部分は職場で学んだ
滋賀県  磯山信夫  70歳

10数年前になるが、地域の商工会議所が主催する労務管理セミナーで聞いたことが今でも心に残っている。その言葉は「現代の人間教育は、家族、地域、学校ではできない。できるのは職場、会社である」というものである。

働く以前に、人間がしっかりしていなければならないが、それが現代では、できていないことも多い。

昔は働く前に学校、地域、家族が人間教育をしていた。しかし、最近は少子化、社会の変化により、社会が内向きになり、人の事まで面倒を見られなくなり、指導をしなくなった。家族では、甘やかし、学校でもモンスターペアレンツという状態で教育どころではなくなった。会社という厳しい、失敗の許されない中で、実践を積むことによってしか人間形成はできない。

働くということは、人間にとって、収入を得て生活することはもちろん、人間性を高め、さらに、自分自身を作り、仲間をつくり、家族や社会の為になることをする。そのこと、すなわち働くと言うことは生きていくということの大部分を占める。

私は38年間地方公務員として働くという事を通じて感じたことは、職場で働き、自分自身の人間というソフトを作ってもらったと感じた。働くにはいろんな知識やその職場のシステム、ルーチンワークの習得なしには成り立たないが、その前提となるソフトがないと、ただ働いて、その為の対価を得るだけのものとなってしまう。その毎日の積み重ねが、形や質を変えて、また、その組み合わせによって、仕事力、人間力をつけてきた事を感じた。

職場では人事異動がある。私はこれを最初、非合理的と思っていた。しかし、これによって様々な仕事を覚え、その処し方も身につけて、いろんな変化に対応できる力をつける事ができると感じた。具体的には、先輩、後輩の関係、頭で覚えるより体で覚える事の必要性や、組織が何を求めているかを知る等、考えなければならない事が多い。職場は毎日が試験であり、こうした実践を積むことによって人間力、仕事力が身についてくる。

さらに、職場には、仕事以外の人間関係があるが、これも無視できない。社会的コミュニケーションでは各種宴会、行事もあるが、ここでも生きていくひとつの方法を見つけなければならないが、ここでは芸というものも必要だろう。音楽、スポーツに疎い者は、この時何かを感じいろんな仕事以外のものを身につける必要性を感じるだろう。また、宴会幹事になればその楽しませる方法等の工夫も必要になる。また、仕事を効率的にするには趣味を見つけて行う事も大切となる。こういうものは退職後にも役立ち、人間力をつける。職場というのはこうしたいろんな機会を与えてくれる。ここで、私はマジックに取り付き、これを趣味として、退職後も行い、地域でも役立てている。職場で、何をしたらよいのか、また、どうすべきかで色々悩んで、人に尋ねたり、書物調べたりしたが、これは実践であるので、緊張感を持って真剣にしたので、成果はあった。働くことで得られた成果は本物になる。実際に経験したことと、頭の中で描いていることとは大きな違いがある。働く事の機会を得る事は大きな力となるのは実践の、緊張感を持った真剣勝負であるからだ。ここで、さらに自分を磨くため、社会保険労務士、宅地建物取引者主任の資格も取得し、役立てた。

ただ残念なことには、我々が働いていた時は、職場は、人を育てるということで、かなりの投資をしてくれた。またそれだけにされた方も、返そうと忠誠心ができる。今の会社は大企業を除くと、派遣、アルバイト等の非正規社員が多い。こうした中では人間力、仕事力が形成されにくいのは残念である。

社会の仕組みを歎いても仕方がないので、自分で向上させる力をつけていかねばならない。そこから力強い人間になり、仕事力をつけて大きな人間になることを期待する。

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