若い頃先輩から言われたことがある。
「一つの仕事が完成した時は、それをまとめておくこと。ここではそうするものです」
ある時まとめたものをこの先輩に見て頂いた。内心ドキドキものだった。
「よく出来ている。これは良いね」
「先輩が教えてくれたことです」
「俺がそんなことを言ったのか」
「はい。勉強になりました」
多分、先輩は仕事に四苦八苦しているのを見かねて声を掛けてくれたのだと思う。おかげでまとめ方を覚えてしまった。
まずメモを残すこと。覚えたこと、失敗したこと、調べたこと。
次にそれらを整理して体系化を図ること。それによって教科書や専門書にはない仕事に即したまとめが生まれる。
別の部署に異動した時、この方法でまとめを作り次の人達に残したことがある。そのまとめを見た人からお礼を言われた時、あの先輩を信じて良かったと思った。
同時に、時代とともに仕事も変化するわけだからまとめの内容も更新していく必要があると思った。そのためには一人一人がその時その時のまとめを作っていかねばならない。
年を取ってからは若い人達にメモを取ること、それをまとめること、それが仕事の能力をアップさせることを伝えたり、作ったまとめを見てもらったりした。リタイアする時は体系化したまとめの総体を作って配ったりもした。
ところで、このまとめには失敗談も多い。というより失敗の積み重ねが能力の源だったとまで思っていた。そんな時、あるテレビを見ていて教えられたことがある。
「失敗を反省するより、良かったことを覚えておきなさい。それが進歩につながるのです」
性格かもしれないが、この年まで覚えているのは失敗のことばかりで、何がうまくいったのか思い出さない。思えばつまらない人生でもある。
だから若い人達に言っておきたい。
「良かったことをメモにして取っておきなさい。それがたまったらまとめを作りなさい。その積み重ねが力になります」