【入選】
「いい意味で、お前はそこにおらんくてもええんやから。辞めたらええ。」
わたしたちには、代わりがいる。
求人広告の数だけ、誰かが誰かに代わってゆく。
自分ができる大抵のことは誰かもできる。事実。
けれど二十歳のときのわたしはこの言葉に少なからず傷ついた。
唯一無二の個性を持ちながらも、唯一無二になれない気がして。
みんな、少なからず持っていると思う。
社会に出て、会社に入れば、そんな唯一無二の自分が、
一緒くたに煮込まれていくような予感。
そして、それはあながち、ハズレない予感かもしれない。
でも、ハズレてほしいよね、そんな予感。
大丈夫、方法がある。とてもシンプルな。
それは、想像力。
想像力を使って、仕事に「二段階目の可能性」をつくる。
想像力は、常に何かと何かを繋げる役割をしてくれる。
「・・ができる」ようには、誰でもなれる。
「・・で何ができるか」という考え方につなげること。
つまり、一段階目の能力を使って、何かを可能にするということ。
建築ができる。カクテルが作れる。すべて、それだけで仕事として成り立つけれど、そこで止まってしまってはまだ代わりのいる人間のまま。
例えがある。デザインができる、ひろ君の話。
ひろ君は、ホテルの部屋の内装を手がける事が多い。
壁紙を選んだり、配色を考えたり、タイルの買い付けに行ったり。
「趣味の延長線みたいな仕事と思っとるやろ、結構勉強したんやで」だそう。
活躍しているようだっただけど、そこからがポイント。
自分は「デザインができる」から、
自分は「デザインで子どもたちに何かできないか」と考えた。
子どもたちというのは、発展途上国で健康に生きられない子どもたちのこと。
「なんかさ、カイガイボランティアとか興味あってんけど、今までできへんかってん。ほら、勉強しとったからさ。」だそう。
休暇を利用し、自らタイ・チェンマイに行き、子どもたちに会ってみた。すると、子どもたちが描いている絵が日本のそれとはとても違う個性をもっている事に気がついたそう。色彩感覚もすばらしい。
「二段階目の可能性」のはじまり。
その後彼が手がけた二つのホテルには、子どもたちの絵が壁紙として使用されている。そして宿泊費の一部は、ワクチンへの寄付に充てられている。
わたしも泊まりに行ってみた、結構遠いけど。
小さいホテル、名もないホテル、新築じゃなくて改装のホテル。
でも誰かさんの想像力から、みんなが幸せになった証のホテル。
趣味か仕事かわからへんな、ひろ君。
とは、もう言わないでおこうと思いましたとさ。
さて。
いま、働いているあなた。
これから、働いていくあなた。
今、想像力を働かせてみて。
持っている夢を贅沢につなげてみちゃうの、いちど。
もしも
なんの想像力も生かされない場所にいるのならば、
いわせて。
「なあ、いい意味で、あんたはそこに必要ないで。」
一緒になろう、唯一無二。