【佳作】
「自然がいっぱいで、牛とかヒツジとか放牧されていて動物の楽園だったよ。」
家が酪農業を営んでいる私にとって、酪農大国のニュージーランド研修は最高の贈り物でした。
現在、私の家では成牛を約800頭、預託牛は約350頭を飼育しており、1日約15トンの牛乳を出荷しています。水戸農業高校畜産科に入学したのも、将来に向けて酪農の基本的な知識や技術を学び身につけたいと思ったからです。
戦後、私の曽祖父は東京から茨城県小美玉市に疎開し、畑の堆肥作りと牛乳の生産による副収入を兼ねて乳牛の飼育を導入しました。経営を始めた時は一頭の乳牛からだそうですが、今では1日15トンの牛乳を出荷するまでになりました。規模が大きくなると管理する難しさが出てきます。搾乳時に牛の寝床の掃除を行い、朝と夕方の2回、敷料を交換します。常に寝床が清潔であれば病気の予防にもつながります。
ニュージーランドでは、ほとんどの牧場が放牧飼育です。夜寝るのも分娩するのも草の上。放牧地の規模はとても大きく私が見学に行った牧場では15haの敷地面積があり、そこに140頭の牛が放牧されていました。私の家では800頭の牛がいますが敷地面積は3haしかありません。その牧場を経営している方に「私たちが最も大切にしていることは、全てにおいて無駄にしないこと。できるだけ新鮮な青草を食べさせて無駄をなくすことができるの。」と話してくれました。無駄をなくすということ、それは、お金の数字だけでなく餌の量などの数字も常に頭に入れ、その動向に応じて経営をしていくことであり、それが重要だと気づかされました。
ニュージーランドは広大な敷地があり、放牧飼育ができるため、牛にストレスをかけずに飼うことができ、また、その放牧されている風景が観光地のひとつになっています。しかし、日本では広大な敷地を確保することができないため、放牧飼育を取り入れて観光地にするというのは難しいです。そこで、6次産業という方法なら日本でも酪農業を活性化できるのではないかと考えました。6次産業とは、1次産業の生産、2次産業の加工、3次産業の流通を一手に行い、農家ならではの味づくりを商品の付加価値にして販売する産業です。将来、私は後継者として牧場を経営していこうと考えています。そして、いずれは、6次産業への参入を目指しています。ニュージーランド研修の中でも何が6次産業のために大切かということも少しですがわかったような気がします。例えば、乳量や乳価状態を常に把握し、乳量に左右されない商品の開発です。ニュージーランドでは冬はほとんどの牛を乾乳にするため搾乳をしない牧場が多く、春から秋にかけて搾ったものを加工し、輸出しています。主にチーズや粉ミルクなどです。日本で6次産業をしている方の中にもチーズを販売しているところも多くありますが、私は他ではあまり見かけない独創的なものを商品化したいと思っています。そのうちの一つがミルクジャムです。すでにミルクジャムは商品化されていますが、さらに手を加え、ちょうど私たちの年代が「かわいい。」と手に取りたくなるようなものを考えています。例えば、マカロンのようなカラフルなミルクジャムです。ベースのミルクの色が白色なのでパステルカラーのような色を付けることができます。色の付け方も、イチゴやブルーベリーなどをフリーズドライにし、粉末状にしてまぜて作るのはいかがでしょうか。他にも抹茶やコーヒーなど、味を変えることで色だけではなく舌でも楽しめるような商品も開発していきたいです。
祖父から父、父から私に受け継がれる酪農の原点を大切にして、6次産業化を実現させ、地域で資源を最大に活かして日本を元気にしたい。それが私の使命なのです。