【佳作】

【テーマ:仕事を通じて、こんな夢をかなえたい】
父の会社を継ぐ
東京都  佐藤晟怜  19歳

私は北海道の知床半島にある羅臼町出身だ。山と海に囲まれた私の地元「魚の城下町」と言われるだけあって、水産物がとても豊かである。そんな私の実家では水産加工会社を経営している。元々は母方の祖父が創設した会社を今は父が経営している。私はいつからか三代目としてこの会社を継ぐのが夢になっていた。

私の父はいつも家にいる時間がなかった。朝は私が起きる前に市場へ行き、その日の朝に水揚げされた新鮮な魚を競りで買い付け、夜も残業で家に帰る時間が遅かった。たまに家族で旅行に出かけても翌日には出張で海外に出かけていた。小さい頃からそんな父を見ていた私は自分も将来は会社を継ぎ父のように仕事したいと考えていた。

それから私は地元を離れて札幌の高校に進学した。十五年間住んでいた地元から急に広い世界にでた私には全てが新鮮で魅力的だった。そんな新しい環境にも少しずつ慣れ、最初は地元に帰りたくて仕方なかったがすっかり馴染んでいた。高校生活でたくさんのものと出会い刺激を受けた私は高校二年生の時には会社を継ぎたいという夢も揺らいでいた。

しかし、私の夢は変わらなかった。なぜ夢が変わらなかったのか。それは進路に悩んでいた高校二年生の時に秋休みを利用して実家の会社でアルバイトとして実際に働いたからだ。アルバイトといってもその仕事は当時の自分にとって酷なものだった。

朝はいつもならまだ寝ている時間に家を出て会社に行き父が市場から買ってきた大量の魚を加工して箱に詰める。流れ作業のため手を休めることなく効率よく仕事を行う。やっと昼休みの時間になってもすぐに時間が経過して午後もひたすら働く。アルバイトの私は夕方には仕事が終わるが従業員の人たちは残業があれば夜遅くまで働き、私より大変な仕事をこなしている。

小さい頃から当たり前のように見てきた会社の仕事はこんなにも過酷でお金を稼ぐということはとても大変であることを。そして、従業員みんなそれぞれ生活するために必死に働いている。父はそんな従業員をまとめて会社を運営しているのだ。私は会社を継ぐということがどれほど大変なことかと気づいた。自分は父のように仕事をできるのかという不安を感じた。しかし、それと同時に、会社を継ぐべきだと感じた気持ちの方が大きかった。祖父や父がこれまでに大切にしてきた会社や従業員を自分の代で投げ出したくないと感じた。

それから私の将来の夢、高校卒業後の進路が明確に決まった。今、私は北海道を離れ東京の大学に通っている。そこで会社を経営するのに必要な知識や策略を学び、たくさんの人と出会い人脈を広げている。いつか自分が会社を継いで業績を伸ばし会社の規模を今よりもさらに大きくさせるために。

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