【佳作】

【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
LABORからWORKへ
京都府  古井菜月  21歳

「自分にとって人生を賭すに値する仕事を見つけなさい。」就職活動を迎えるにあたって、父から言われた言葉だ。私はその言葉を聞いたとき、人生という単語の“重み”に気が萎縮するのを感じた。果たして人生の新たな門戸を叩くに足る資質を、今の自分が持ち合わせているのだろうか。そんな疑問が、一抹の不安となって頭をよぎる。

幼少期から法曹の仕事を志していた私は、高校卒業後は迷うことなく法学部に進学した。しかしながら多くの経験を積んでいく中で、これまで漠然と描いてきた将来への展望“この道”は少しずつ揺らぎ始めた。その頃「働く」ということついて、改めて考える契機が訪れた。大学での研究過程の中で、私はワーク・ライフ・バランスという概念を知った。これは仕事と生活の両立を目指そうという概念であり、近年多くの民間企業や官公庁において福利厚生政策の基本指針として取り入れられている。私はこの概念に触れ、これまで自分自身が“ワーク”と“ライフ”を天秤にかけてきたことに気づいた。どちらを優先し、また疎かにするか。人生の門戸を前にして、そんな二者択一に苦慮を重ね続けてきた。

しかし現在は、政府と企業が一体となって、就労者の仕事と生活の両立をバックアップする社会体制づくりが進められている。金銭を得る為手段としての労働という考えは、もはや時代錯誤である。就労を通じて私たちが得るもの、その付加価値の可能性がさらに広がっている、それが現代だ。“ワーク”を通じて経済的・社会的活力の向上に貢献し、その一方で自分の価値観に即した“ライフ”をデザインする。ここに国民が労働を支え、労働が国民を支えるという構図がある。

労働が生活に新たな付加価値を与える、それが現代の「働く」の在り方ではないだろうか。

「自分にとって人生を賭すに値する仕事を見つけなさい」以前、私はこの言葉を“仕事に人生の全てを捧げなさい”という意味として解釈していた。しかし今ではこう思う。

“仕事に人生を賭ける程の熱意を持ちなさい”と。

今、人生の新たな門戸を叩くその拳には、たしかな情熱が宿っている。

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