【佳作】

【テーマ:さまざまな働き方をめぐる、わたしの提言】
自分らしく働くことを求めて
福島県  カワセミ  26歳

大学三年生の夏休み、周りが就職活動(以下就活)を考え始める中、私は動きだせないでいた。

就活用の格好や振る舞いが、できなかったからだ。きちんと化粧をして女性物のスーツを着て、パンプスを履いて、足は閉じて座ってといったことが、どうしても出来なかった。

戸籍は女性であるけれど、私は自身の性に違和感を持っていた。そしてそれを基本的には周りには話していなかった。たまに理解がありそうな人に、性に違和感があると言うと「じゃあ男になりたいの?」と言われるが、それは違う。私は自分のことは男でも女でもないと思っている。普段は中世的な格好やふるまいをして生活をしていたが、スーツに中性はない。悩んだが、女性のスーツは体のラインが出るのが嫌で、男性のスーツで就活がしたかった。格好のこと以外でも、足は肩幅に開いて手は重ねたくなかった。エントリーシートや履歴書の性別欄も抵抗があった。

学校の就職支援室に行って「性に違和感があるので男性の格好をして就活をしたい。そういうことに理解がある所で働きたい」そう言おうと何度思ったか知れない。しかし私は言えなかった。「それくらい我慢しなさい」「社会に出たらもっと大変だよ」そう言われるのが怖かった。同様の理由でハローワークにも行けなかった。

誰でも相談できない中、結局自分で探して、面接も私服で良い所を一社と、セクシュアルマイノリティの活動をしている会社を受けたが、どちらも落ちてしまった。理解がありそうな所も見つけたが、興味はなかったため受けなかった。このままフリータとして生きていくんだろうと決意を固めた矢先、知り合いの伝手で就職が決まった。今は服装髪型自由な所で仕事ができている。他のセクシュアルマイノリティの当事者と関わることの多い仕事だ。

私はこのように落ち着いたが、性別に違和感があって就活で困る話はよく耳にする。周りに言っていないため、誰でも相談できないまま我慢して就職、就活している人も少なくない。私が転職するとなった場合にもまた、同じことで悩むことになるだろう。

確かに社会に出たら我慢しなければいけないことは多い。しかし自分の性別の違和感は我慢するべきところではないと、今になって改めて思う。あの時妥協していたら、今こうして自分らしく働くことはできなかっただろう。

就活の際、性別に違和感があるだけで、他の人と同じような選択肢がなくなってしまう人がいるという現状を踏まえ、出来るところから就活の仕組みが変わっていくよう期待する。

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