【佳作】
「全力で、フルパワーで生きることが子育て」
働くママと、家にいてくれるママと、子供にとってはどちらが幸せなのだろう。これは私だけでなく、昔から子供を授かった女性にとって答えの出ない永遠のテーマではないかと思う。私は現在1歳になる息子を保育園に預けてフルタイムで仕事をしている。私自身はいわゆる専業主婦をして、家で家庭を守るというタイプではないと自覚はしていた。しかし、実際に子供を一日10時間以上預けるとなるとやはり葛藤があった。
私の母は私と妹が小さいうちからヤクルトレディをやったり、色んな仕事をして家計を支えていた。決して裕福な家ではなかったが、家の中は明るく、貧しい思いをした記憶はなかった。大人になって母にそのことを聞くと、その頃の生活は思っていたより経済的に厳しかったようだ。
母が介護関係の事業を立ち上げたのは、私が小学校4年生になった頃だった。私が急に中学受験をしたいと言い出したのだ。私を塾に通わせる金銭的な余裕はなく、考え抜いた母は高齢者への訪問歯科事業及びデイサービスの経営を始めることにした。事業を始めると、毎晩のように接待が続き、私たちが寝てから母が帰宅することも多くなった。今まで比較的家にいた母が、いつでも会える存在ではなくなっていった。寂しい気持ちや申し訳ない気持ち、そして毎日くたくたになるまで働き、それでも家庭の明かりを灯し続ける母に尊敬の思いが幼いながらに強くなった。
母の会社は現在も安定しており、私たち家族の生活を支え続けた。母がもし働いていなかったら、私は受験や就職活動、社会人になってからの悩みを彼女に相談していなかったと思う。母として、女性として、一人の人間として強くあり続け、様々な経験をしている母だからこそ、私をその都度救ってくれる存在であった。
果たして子育てとは、一緒にいる時間=愛という単純な方程式で考えてよいのだろうか。輝き続ける母の背中を見て、子供は成長すると思うのだ。忙しくても全力で愛してくれる母を見て、子供は安心して自分の道を進めるのではないだろうか。私も同じように、自分の生き方で子供の成長へ影響を与えたいと感じた。そう考えた結果、私は出産後フルタイムで働くことを選択した。
保育園へ預ける初日、慣れない先生に抱かれながら泣く子供の姿を見て私も大泣きをした。私は自分勝手な親なのだろうかと自責の念に駆られた。そして子供を迎えにいく時間になると、そこから預けた10時間を取り戻すかのように子供への愛情を2倍そそぐようになった。今では子供も保育園に慣れ、自ら先生に手を伸ばしていくようになった。私だけではできない育児を保育園の先生の手を借りて行うことができているとも思っている。
女性が働くことが浸透してきた現代ではあるが、子持ち女性の仕事力は、スピードダウンしてしまうというイメージがまだまだ強い。本当にそうだろうか。子育てをしていると、自分でも計り知れないエネルギーが生まれてくるものだ。原動力2倍、頭フル回転、それが働くママだ。その活力をしっかり活かすことに、どの企業も注力できていないように思える。その一方で、仕事の為に子供を犠牲にしているという意見もある。しかし、子育てをするのに自分の成長を止める必要があるのだろうか。むしろ逆だと私は思う。毎日保育園で子供が成長している間、私も仕事を通して成長していきたい。そしていつか子供が大人になったとき、私が母に求めたように、あらゆる場面で人生相談できる相手でありたい。
私はこれからもパワフルで輝き続ける働き方をしていきたいと思っている。