【佳作】
社会の役に立つ人間になりたいと希望を抱いて新社会人へ、大海原へ旅立った
両親、兄弟、先生、友達、多くの人に見送られ、旅立った
会社という大きな船に乗った
会社の決まり、上司や先輩との付き合い方を教わった
お得意様や上客の接待を教わった
けれど普通のお客さんとの付き合い方は教わらなかった
利益という船の燃料を求められた
普通のお客さんからの利益を求められた
燃料はすぐカラになる
9月と3月にカラになる
仕事はリセットしない
どんどん、どんどん、膨れ上がる
5年後、次第に求められるものが多くなり、船を下りた
行く宛などない
小さな島を持つ人のお手伝いさんに臨時で雇われて生活している
この生活は長く続かない
1年後、妻が出来、子供が出来た
私の家族を守りたい、しかし守る力がない
誰かに助けてもらいたい、そんな気持ちでいっぱいだ
家族も乗れる船はあるだろうか
あれば是非乗りたい
今度は社会を照らそうとは思わない
船が航海を終えるまで、ただひたすらにしがみつこう
窓際だって構わない
偽りのプライドでは飯は食えない
自分より弱い人間はたくさんいる
少しのことで救える人もたくさんいる
それでも救われるのは、一部の力を持つ人の、救いたいと思われる人だけ
そして私が救いたいと思うのも、家族以外にない
それよりも自分が救われたいと願っている
己の小ささを実感して、それを認めている
自分の思い通りになることなんてほとんどない
流れに身を任せることができる境遇にもない
流れに逆らいながらも前に進むしかない
何かを選んで、意志を持って掴み取る
そこには常に犠牲がつきまとう
自己犠牲、他者犠牲、環境犠牲
1つ1つに向き合えばキリがない
意志の堅さ、潔さ、そして状況、環境をクリアにする能力
これを持たなければ前に進めないし、何も掴めない
掴んだ人は離さない
掴むのがとても大変だったから
そのうちそれは、あって当たり前、なくては不安なものに変わっていく
しかし私はそれが欲しい
本物のプライドは、生きた証になるから