【努力賞】
さまざまな働き方をめぐる、わたしの提言
石川県  平井凛  15歳

人手不足が深刻な問題となっている飲食業界。ブラック企業と呼ばれるところも多いのではないだろうか。そんな中、生き生きと働き、帰ってくるのが私の父。父は、料理人で私が生まれる前からその職についている。

家にいるときはだらーっと過ごすが、職場ではそうはいかない。汗を垂れ流しながら動く、動く。そうして真剣に料理に向き合う。

ブラックとまでは言わないが、父の職場は休みが少ない。その少ない休みの日。話題になるのは大体仕事のこと。笑顔で「仕事が忙しいね」と、私や母に語る。それが少し寂しくもあり、とても嬉しくもある。寂しいのは父に会えるわずかな時間も仕事の話をするから。そして、とても嬉しいのは、料理人に誇りを持っている父がうかがえるから。

ブラック企業がニュースで取り上げられる機会も増え、働き方は度々問題になっている。働くことが苦となり、自殺する人も報道される。その報道は私を悲しませる。ある時、こんな事が頭に浮かんだ。

「仕事をする必要はあるのか。」

仕事があることで社会が成り立っているわけだからとんでもない疑問だと思うひともいるだろう。私は「働かない、働きたくない。」と思っていた。そこででてくるのが父の存在だ。

私が父の職場での働きぶりを見たのは二、三度。忙しくて対応できないから来てほしくないというようなことを言っていた。父の店を隠れて見に行ったことが一度だけある。がやがやと騒がしい店内で包丁さばきを見せる父。料理人としての表情には、凛々しさが感じられた。誇りを持って料理に向き合っているのだろうなと私は笑顔になった。

今の社会は仕事をする必要がある。ならば、仕事をする必要はないと思ってずっと考えるのは無意味だ。

「私に必要な仕事はなんだろう」

私にはこの仕事が必要なんだと思えることが大事。仕事は、自分らしくあるための居場所。私はそれを父から学ぶことができた。

父は、家でも料理を作ってくれる。台所に立つ父は職人のオーラをまとっている。彩り鮮やかな料理には、すべて手間と苦労がかかっている。いただきますの言葉に自然と私の感動がまじる。父は食卓に着いてバラエティ番組をつけて、アハハと笑っている。夏場に調理したことで汗ばんでいるように見える。私はそんな父を横目に見ながら料理をほおばり、ぽかぽかとした幸せに浸る。

心を込めて、苦労や手間をかけて働けば、人を幸せにできる。実際私は幸せになった。

逆に雑だったりすれば、悲しみを生むかもしれない。疲れすぎて雑になってしまうなら、働く意味を失ってしまう。働く意味を失えば、自分らしくいられず、苦しんでしまう。ブラック企業は、苦しんでいても働かせる。だから自殺者まででてしまう。ブラック企業に勤める人は、「辞める」という道を消されているケースが多いと聞く。「辞める」という選択肢を周りの人が用意するのも大切だと考えられる。

働き方のニュースや父の姿を見てきて思った。

「私が働くときは自分らしくあること、人を幸せにすることを大切にしていこう。」

いろいろな働き方が増えていると感じる世の中。私もその中に飛び込んでいかなければならない。正直働くのは嫌だし辛そうだ。でも、父が父らしくある職という居場所はなくてはならないものである。私にはたくさんの選択肢がある。それはとてもありがたい。私も父に続いて私らしくあることができる場所を探していきたい。

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