【努力賞】
【テーマ:仕事を通じて、こんな夢をかなえたい】
私が働く理由
札幌月寒高校  佐々木恋  16歳

去年の9月、母が入院した。最初は原因もわからず治療を受ける母を元気づけるためにお見舞いに通っていた。二ヶ月程経った雪の降る前の寒い日、母に病院に呼び出され母の病気を知らされた。癌だった。聞いた事も無い名前の癌に混乱して、インターネットで検索し夜な夜な泣く毎日が過ぎていた。その時私は、アルバイトを辞めたばかりで何もしていなかった。

私には小さな頃からの夢がある。それは、歌手になる事。両親は初めてオーディションに行きたいと言った時、昔からそんなに裕福ではなく、寧ろ苦しい生活をしていたにも関わらず、中学生の私を東京へ行かせてくれ、応援してくれた。そんな夢も高校生になって何気なく毎日を過ごしているうちにどこか遠くへ行ってしまっていた。そんな時、母の癌宣告を受けて母が応援してくれていた事を思い出して頑張ろうと思った。決して楽ではなく、お金も他の職業よりも何十倍とかかる。そんな夢を快く応援してくれている母に、ちゃんと叶えて見せたいと私は思った。

アルバイトが決まって初出勤を終えた日、母から一件のLINEが来た。「いまからICUという所に入るから」と。最初はよくわからなかった。ICUという言葉が何なのか、どんな人が入るところなのか。「病院に行ってはいけない。」という父からの連絡で、しばらくは病院に行く事をやめ、アルバイトに専念した。だが、やっぱり心配になってしまい、父に内緒で病院へ足を運んでしまった。ICUに入ると、思っていた母とは違う母がベットに横になっていた。言葉は発せず、娘である私の事もすぐはわからず、本当は泣きそうで怖くて苦しくて逃げ出したかった。でも、母の言葉を聞きたくてしばらく寄り添っていた。そんな時言葉を上手く発せなくなった母が私に向けて一言言った。「頼むよ」と。その一言で私は色々な決心と色々な後悔が混ざり、涙が止まらなかった。「きっと夢を追いかけるのをやめ、アルバイトもしていない私の事で沢山心配をかけていたんだろうな」という後悔と「残り少ないかもしれない母との時間の中で夢をまた追いかける姿を見せられるかもしれない、頑張ろう。」という決心だ。

今までは夢の為、夢の為、と言いながらもお金を貯めず母に迷惑ばかりかけていたが、母の姿を見て「自分も頑張ってアルバイトをし、自分の夢を叶えて母に見せよう。」と、強く心に誓った。今はまだ高校生で、働く事が限られている。だけど、その中でも出来る限り、夢を叶える為の資金を貯め、母親を世界で一番の幸せ者にして親孝行をしたいと考えている。それが私の働く理由だ。

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