私は中高一貫の進学校に通っていた。クラス分けは成績順、中学は高校のため、高校は大学のため、大学は大企業に入り安定した生活を送るためという思想が当たり前になっていた。そのため、勉強や部活には一生懸命励んだ。退屈ではなかったが、常に追われていて落ち着かない感じがしていた。そんなある日、小学校時代の友人のお宅から手紙が来た。年賀状以外に郵便物を受け取ることがなかった私は驚いた。恐る恐る手紙を開けてみると、それはお葬式の案内だった。全身に衝撃が走った。入院していたことは知っていたが同じ歳の友達が本当にもういなくて、一生会えないと考えると涙が溢れ出した。同時に、その子がお医者さんになり病気の子供を救いたいと語っていたのを思い出した。
その日から私は将来何がしたくて今勉強や部活をするのかということをふと考えるようになった。だが、すぐに答えは見つからず、それからはたくさんの活動に身を投じるようにした。安定した生活を送るためだけに生きるのではなく、目標や夢を持ちたいと強く思った。
2011年3月に高校卒業を迎え、卒業旅行を楽しみにしていた。その矢先、東日本大震災が起きた。旅行を中止し、テレビの放送は変わり果てた街や困り果てる方々の映像になった。被災地はすぐにボランティアを受け入れることもできない悲惨な状況だと知りショックを感じた。大学に入り被災者の方々のお話を聞く機会に参加した。多くの人は家、お金、将来のことなどを心配していた。何不自由なく過ごしていた私はお金は節約すればどうにかなると思っていたが、実際電卓をたたいてみると、全くどうにもならなかった。生まれて初めてお金の大切さを痛感した。大学ではビジネスとは何か、社会でのお金の流れに興味を持ち勉強した。そして、命や生活を支えるお金を循環させ世の中を活性化させたいと考えるようになった。現在は銀行に勤め日々勉強させていただいている。働いている中でお金には名前は書いていないが、人の思いが詰まっていると感じている。そのため、ミスが許されない細かい作業やプロとしての意見を求められる機会が多くプレッシャーを感じるが、それでも安定した生活を送るためだけではなく、お金を循環させ人々の暮らしを支えたいという目標を持って働くことに充実感を感じている。また、まだまだ駆け出しで失敗も多く、お金を稼ぐということはこんなに大変なことなのだと日々痛感している。これから働いていく中で辛いこともあると思うが、働くことで目標や夢を叶えられるよう精進したいと思う。