【努力賞】
【テーマ:仕事を通じて、こんな夢をかなえたい】
「ありがとう」と言われるために
山口県立山口高校通信制  村田亜里紗  28歳

「姉ちゃん、ありがとね。」私が毎日、何度となく言われる言葉だ。私は現在、介護施設で働いている。介護の仕事をしているというと、周囲の人から「大変だね。」、「力がいる仕事だね。」としばしば言われる。確かに大変な仕事と言えるかもしれない。しかし、どの仕事に就いても大変なことに変わりはない。むしろ楽な仕事をして給料をもらえるほど世の中は甘くない。16歳の時、スーパーでアルバイトをしていたが、たくさんの洗い物はもちろん、片づけをすべて一人でやっていたのでかなり重労働だった記憶がある。

今の仕事についてから三年。毎日高齢者の方より感謝される。仕事をするたびに「ありがとう」と言われるのはとても気持ちのよいものだ。時にはよくわからないことで怒られたりすることもある。私の勤めている施設では、要支援1から要介護5までの比較的介護度が軽い方から重い方まで様々な方がいらっしゃる。認知症のある方には突然、怒鳴られたりすることもよくあることだ。働き始めて最初の頃は、そんな認知症の方との接し方に戸惑っていた。しかし、介護福祉士の先輩に利用者様の接し方や車椅子への移乗の仕方などを教わり、今ではうまくこなせるようになった。

介護技術が身につくと、次第に医療について学びたいという思いが強くなった。利用者様の中には癒病(てんかん)などの発作を起こし、急に意識がなくなる方もいる。私は驚きのあまり何をしていいのかわからず、動揺しておろおろするばかり。そして「看護師さん、早く来てください。」と叫ぶだけだ。看護師はすぐに利用者様に呼びかけ、脈拍などを測り冷静に対応する。私は何も出来ない。こんな時、私が看護師だったら、医療の知識があれば、と何度思ったことか。

私には夢が出来た。看護師になる夢だ。看護師になって、何も出来ない自分と決別したい。そのため今は受験資格を得るために通信制高校に通っている。16歳の時、両親が離婚し、自暴自棄になって学校を辞めてしまったが、それからちょうど10年になる。久しぶりの高校生活に戸惑いも隠せない。夫と別れ小学生の娘を育てるのは大変だけれど、どんなに仕事で疲れでも、深夜遅くまで机に向かっている自分がいる。以前の自分だったらすぐに諦めていただろう。しかし、今は石にかじりついてでも看護師になりたいという気持ちが強いからだろう。体力が限界と思っても結構頑張れるのだ。

看護師の仕事も介護の仕事と同様にとても大変な仕事である。人の命を預かるミスの許されない仕事である。これから医療についてたくさん学び、立派な看護師になりたい。そして「ありがとう」と患者様に言われるよう毎日一生懸命仕事をしていきたい。

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