私は「介護福祉士」として介護老人保健施設で高齢者のお世話をさせていただいている。
私が入職して一年もたたない頃だった。
70歳代の男性が食堂で暴言はきながらイステーブルをひっくりかえし暴動を続けていた。
私も含めて三人の男性介護士が彼をとりおさえようとしても、とどまることがなかった。それはすさまじい行動で、しばらく続いた。この緊急事態を聞きつけて彼を担当していた女性介護士が駆けつけた。
『Aさんどうしたの?』
彼の肩に手を触れただけだった。あれだけ暴れていたにもかかわらず、一瞬にして彼は平静心をとり戻した。
その光景を目のあたりにした私は、まるでマジックを見ているようであった。
彼と彼を担当していた介護士との強い信頼関係に感動した。この心のケア、介護を知り尽くしたプロの技を私は鮮明に覚えている。
衝撃的な生の教科書だった。
このことが私の新たなスタートとなった。
「鬱病」「認知症」など心や脳の障がい持つ人の病、心のケアを深く理解し、幅広く対応したと思った。
体と心の調和とれた介護が、リハビリや病の回復に繋がり、克服となっていく。ストレス社会の現代だからこそ癒しは必須だと思う。「病は気から」病んでいる人の心を癒していくことの大切さは無視できないはずだ。
でも日常、身体的介護におわれ、心のケアなど余裕ないというのが現状だ。そこで利用者さんに一声かける。共に行動するだけでも表情はちがってくる。笑みが生まれる。
時折、職務に余裕ない時「介護ロボ」あればと頭がよぎる。昨今、ロボットが掃除や介護もしてくれる。まるで夢のよう…。将来、人の心の中まで可視化できるロボットが誕生するかもしれない…。何か腑に落ちない。
ロボット、人工知能には人間のような「心」「感情」には欠ける。融通はきかないし、臨機応変は皆無に等しい。
私たち介護士がいるではありませんか!おおいに私たちを頼りにし、リクエストしてほしいと願うのです。
今の私にとってはロボットは強敵であり、ライバルだ。決してロボットには負けない!私には人間としての心、感情、気配りがある。そして傾聴力で「シルバー」世代が笑い輝き、「ゴールド」にもさせてみせよう…。
私自身のこの手で「動く手添えて共に豆腐切ったり」「あなたどなたさん?と聞かれば毎度いつもの自己紹介」くりかえそう…。
共に皆さんと会話し行動することで私に信頼感を寄せてくださることが励みになり、今後の「糧」
ともなる。たまに「ハグ」もあり「若い兄ちゃんと、まあ恥ずかしい」なんて笑いの渦となり、こだましていく…。
時にコンプライアンスが邪魔したり、マニュアルどおりではない、教科書では教えてくれない…それは皆さんと接し、初めて気づき、学んでいくことが多々ある。
実は、お世話させていただいているというよりは、人生の大先輩に知恵袋を沢山、学ばせていただいている。
今「私しかできないこと」「私なら必ずできること」そして独創性を自分なりにアレンジ模索しながらサービスを心がけている。
そして必ずや実現したいことー。
要介護、防ぐ為にも60歳以降の健康診断では「認知症」の診断も項目入りするよう行政に働きかけたい。認知症は適切な治療受ければ、進行を遅らせることができるそうだ。40歳以降からメタボ検診があるのと同様、年齢に応じての項目は必須と思う。この受診を義務化してしまえば拒否はできず…。早期発見・早期治療に繋がる。希望がもてる。
高齢者は健康な幸齢者であるべき…。
10年後の私はケアマネとして皆さんの信頼を得て高度な技術で、ロボットより私に軍配が上がっているよう日々、努力を重ねよう。