【 公益財団法人 勤労青少年躍進会 理事長賞 】

【テーマ:仕事探しを通じて気づいたこと】
働くことは社会貢献
京都府  白 川  譲  41歳

私は発達障害のため他人よりかなりスピードが遅く、書類のファイリングなども場所を間違えては「なぜこんな事も簡単に出来ないのか」と叱責されることもありました。生産性が低いためリストラに遭うことがたびたびありました。そのたびに様々な媒体を通じて求職活動を行い、人材派遣会社に籍を置いて様々な仕事を経験しています。仕事を探し、そこで働く中で私が見つけたこと、それは働くことがそれだけで社会貢献になるということです。アルバイトの場合はまた別ですが、パートでも正社員でも、働くみなさんは給与明細をご覧下さい。どんな業種、職種でも同じような控除項目があるはずです。たいてい、雇用保険、健康保険や税金が控除されています。社会貢献というのはこれです。給与から源泉徴収される税金は橋や道路などのインフラ整備に、健康保険料は皆さんが病気になった時の備えのほか、最近報道の多いメンタルの問題などで休職している方の生活にも役立ちます。また雇用保険料は皆さんの失業時の備えのほか、職業訓練や障害の方へのサポートにも使われます。厚生年金保険料の一部は国民年金にまわり、国民全体が老後の支えとする基礎年金を積み立てるのに使われます。

私は障害者ではありますが、周囲の方々の理解を得て働き続けることができています。そしてその労働から得られたお金の一部が税金として社会を回り、遠い東日本大震災や豪雨の被災地の復興に使われることを考えると、自分が働くことを通して社会に貢献できているのだと感じることができます。また私たちの納めた税金は、ODAなどとして遠くまだ困っている人たちのたくさんいる国の発展を支えることにもなっています。私たちが日々の仕事で稼ぎ出したお金は、めぐりめぐって世界を潤しているのです。

そう考えると、私たちは特別なことをしなくても、日々働くことだけですごい貢献をしているのです。私たちのお金が私たちの街を新しくするのに使われ、救急医療にも役立ち、遠い国の貧しい人たちを助けているのです。私は同じ発達障害の方のピアサポートも任せて頂いていますが、世の中にはまだまだ目に見えない障害で苦しんでいる人がたくさんいます。就職する前の段階で何回も職場に実習に行く必要のある方もいますし、その実習先で向かない仕事を与えられたり、大きな課題に直面したりする方もあります。そのような方たちのサポートにも給与から引かれている保険の一部が使われるのです。

繰り返しになってしまいますが、働くだけで私たちは本当にすごい社会貢献ができます。年号は平成から令和になりました。それを飛び越えて社会情勢は目まぐるしく変わり、人事評価にもAIが導入される時代になりました。このAI査定は、目の動きまでアプリが認識して数秒で答えを出すというシビアなものです。この時代に働くことは決して楽ではありません。人手不足が叫ばれる一方で、一部では生産ラインの自動化や省人化で人手は不要と言われ、また優秀な外国人材が受け入れられる動きも加速化しています。忙しいなかでも語学力やビジネススキルを周囲の人よりも多く身につけないと、取り残されてしまうかもわかりません。接客も実験的な場所ながらロボットが行うというWeb記事も見かけます。そんな中でも私たちは働いて日々を過ごしています。職場では予期しない出来事も起こりますが、働き続けることで私たちはオリンピックを迎えるこの日本社会を、そして世界を支えることができるのです。

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