【 佳 作 】
私は、若い頃、小説家になる夢を描いていた。
しかし、56才になる現在に至るまで、その理想は、適えられていない。
その間に私は、様々な職業を体験してきた。
新聞配達から始まって、教材の営業、本屋店員、パンの製造、洋菓子の製造、会計事務所、電線会社、倉庫会社、カバン屋、百貨店の紳士服販売、発掘現場の作業員、その後は、派遣社員として、多様な職業を経験する日々を私は、送ってきた。
私が、職を離れた理由は、様々であるが、私の性格に起因しているのが、大半である。
当然の事ながら、若い頃から、自分自身を見つめ、自分の適性に合った職に就くのが、最善の道である。
(多くの人々は、生活のために、気に入らない仕事も、我慢して頑張っているのだが)
そして、充実した職場生活を送るためには、私の経験から、良好な人間関係を築く事が、最も大切である。
人間関係にひびが入ると、毎日の出勤が、辛いものになる必然性が、高まってくる。
私が、靴の卸問屋で働いていた時、「職場でいじめられるのは、周りの人にその人が、壁を作っているからいじめられる。壁を突破らって、職場の人に、ぶつかって行かないと。」
私が、作業をしている隣りで、上司は、同僚とそんな話しをしておられた。
その言葉は、20年経った今でも、私の心に深く刻み込まれている。
私は、職に就くと、「これが、本当に私のやりたかった事だろうか。この仕事は、私に向いていないんだろうか。あの人とは、接したくないな。」等々、私の心は、悩みの渦に巻き込まれていく。
電化製品やゴルフ製品の販売会社に私が、勤めていた時、上司にふと、そんな悩みを打ち明けた事があった。
その上司は、「長く仕事を続けるためには、夢や目的を持って働かないといけない。例えば、社長になるとか、会社を大きくするとか。」
私は、その言葉に目が覚める思いがした。
その言葉も、30年以上経った今でも、私の心に深く刻み込まれている。
もう一つ私の心に深く刻み込まれている言葉は、電線会社に私が勤めていた時、社長が、発した次の言葉である。
「物事を始める時は、よく考えてから、やらんとアカン。」
その時、私は、仕事でミスを犯してしまった。
そして、私は社長に恐る恐る謝罪をしたのである。
その場での社長の言葉が、それである。
私は、それ以来、物事を決断する時、必ずその言葉を肝に命じて熟慮するのである。
お金を稼ぐとは、本来、苦労の耐えないものであるが、これからの若い人達には、前向きに仕事に取り組まれることを切に願い、人との出会いを大切にしてもらいたい。
私自身の仕事への対応は、批難に当るが、今までの経験が生きて、私の人生に花が開く日が訪れるのを信じて、人生を私は、駆け抜ける。