【 奨 励 賞 】
私の職場は、一般企業への就労に結びつかなかった障がいのある方々へ、就労の機会を提供している事業所である。
現在50名ほどの利用者が通所され、雑貨づくりと農作業を中心に、職員と利用者全員で汗を流している。
一人ひとり違った課題があり、それを一つひとつクリアしていく。できることを少しずつ増やしていき、時には壁にぶつかりながら、目標に向かって歩いていく手助けをする。
慣れない手つきで布をハサミで切っていた人も徐々に精密さを身につけ、今では職人さながら。長い間家に引きこもり状態だった人も、照りつける太陽の下で泥だらけになって野菜を笑顔で収穫している。
そうした皆さんの成長する姿に喜びを感じる日々の中で、いつしか自分から自分へ疑問が投げかけられるようになっていた。
「自分はここにいるべき人間なのだろうか・・自分はみんなの役に立っているのだろうか・・」と。
そんな悶々とした思いで過ごしていると、ひとりの利用者の方が私に声をかけてくれた。
「最近元気がないように見えますが、どうしたんですか?みんな心配しています」
はっとした。
ここを利用する方たちは、つまづき体験も多く、相手のちょっとした表情に敏感な方が多い。
私は悩みを誰にも話さずに過ごしていたが、知らず知らずのうちに表情に現れ、周囲に不安を与えてしまっていた自分に気付く。
動揺を隠しきれず、思わず「働くってなんなのでしょうかね・・」と聞いた。
するとすぐに「楽しいことです」という答えがかえってきた。
「だって毎日通える場所があって、自分の役割があって、仲間たちに会える。今までずっと外へも行かず家の中で過ごしていたので、今とっても幸せなんです。自分の作った雑貨を買ってくれる人がいることも幸せです。職員さんも大変だと思いますが、いつも本当にありがとうございます」
その人の表情はまぶしいくらいの笑顔でいっぱいだった。感謝しているのは私の方だ。
こんな自分でも利用する人たちの役に立っているのだと思い、救われるような気持ちになった。
その日以来、私は利用する方々への感謝の気持ちを忘れずに仕事をしている。嬉しいことがあれば自分のこと以上に喜び、時には一緒に悩み、一緒に涙しながら。
AIが発達していく中、この感情というものだけは人間同士だから味わえるものではないでしょうか。
私が現場からの提言をお伝えするならば、働くとは、必ず誰かのためになっており、人は支え合って生きているということ。だから楽しいこと。
私はこの言葉に尽きます。