【 奨 励 賞 】

【テーマ:現場からのチャレンジと提言】
なぜ、仕事を辞めるの?
青森県  長 牛 由 美  44歳

「SさんとYさんが、4月いっぱいで退職します」

私は、主任が話す言葉を聞いてとても驚いた。高齢者デイサービスで働き始めて半年。多くの介護職員、看護職員が退職するのを目の当たりにした。

看護師として職場復帰する前、私は7年間も専業主婦だった。家族以外の人と接する機会がなく、職場の人と接することが自分自身の刺激になっていた。時には、厳しい言葉を言われることもあったが、仕事は仲良しクラブではない。仕事という対価を払い、給料をいただくものだ。多少の厳しい言葉は、自分の胸の内にしまっておいた。

辞めていく職員に共通していたことは、上司が部下の提案を聞いてくれないというものだった。上司の言い分は、部下は組織の一員ということを失念しているとのことだった。実際に働いてみると、どちらの言い分も一理あるなあと感じた。

私は、どのようにすれば、お互いが気持よく働けるか考え、仕事の改善案を上司に提案することにした。上司は、介護福祉士で、看護師の私とは、持っている知識に違いがある。また、経営上の問題もあるので、私の提言は全てが通ることはなかった。働いて給料をいただいている以上、無理は通らないことは仕方のないことだ。私は、仕事の折り合いをつけることにした。

現在の若者の3年以内離職率は、高卒が39%、大卒が32%と言われている。介護の現場では、離職率はもっと深刻だ。

仕事を簡単に辞めていく人々に伝えたい。上司に仕事の提言をしよう。言いたいことがあれば、口調はやんわりと、提言ははっきりと伝えましょうと。そして、上司の方にもお願いしたい。部下の気持ちは、十人十色。きつい言い方ではなく、部下に優しさを忘れてはいけないと思う。そして、可能な限り、部下の提言を聞いてほしい。提言をできる部下は、仕事を真剣に考えている。また、提言をすることによって、仕事を失うリスクを負っている。それでもなお、仕事で大切なことを伝えたいと思っていることを忘れないでほしい。

介護現場での早期離職率は、非常に深刻だが、働いている人間の言い方や考え方を変えるだけで、離職率は減少すると思う。日本は少子高齢化が深刻だ。高齢者を支える介護職員が、精神的に安定していないとより良い介護は提供できないと思う。上司や部下のお互いの歩み寄りが、何より必要であると感じた。

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