【 奨 励 賞 】
「いらっしゃいませ!」と元気な声はA君。ここは障がい者就労継続支援施設B型『毎日食堂』です。A君、今日は接客に入っています。私が縁あってこの社会福祉法人に非常勤役員として関わるようになってもう8年が経ちます。当然ですが周りは障がいを抱えて働く方達ばかりです。『毎日食堂』では接客の他に調理や盛り付け、後片付けなどの仕事があります。その他外注を受けた日替わり弁当の配送補助の仕事が有ります。A君は若手ですが、メンバーの年齢層は巾広く10代から70代、男性も女性もと多様です。この食堂で働く以外にメンテナンスやお土産品・贈答品の箱詰め、単発ですがざぼんの皮むきなどもあります。更に農業班もいて郊外の畑で無農薬野菜を作っています。その収穫物は食堂で調理される他、漬物などに加工されています。職員は本人の意向も踏まえてそれぞれの適正や能力に応じた仕事を提供しています。このように多様な働き方が選べることがこの事業所の特徴でもあります。
日々彼らの働きぶりを傍らで見ていて、私はそれらの働きが有機的に繋がって何か一つの事業を成し遂げられないかと考えるようになりました。特に若いメンバーには一般就労は難しくても、社会の一員として責任と誇りを持てる職場があれば、働ける時間は短くても彼らの人生の中でその時間はかけがえのない輝く時間となるのではないかと思うのです。そんな時ある記事を目にしました。全国に先駆けてB型事業所がホテル経営をしていたのです。私はこれだ!と思い、きびきびと又はゆっくりと働くメンバーの姿を想像しました。まずフロントには笑顔の良いB君、食堂は朝食と昼間の喫茶だけにしてランチやティータイムに対応するので今の毎日食堂の経験がそのまま生きます。夕食はお好みで街に繰り出しても良いでしょう。部屋のメンテナンスやベッドメーキングはホテルで働いていたC君がリーダーに、DさんもEさんもゆっくりですがお掃除が得意です。朝食は焼き立てのパンを売り物にします。などなど次々に思い浮かぶのですが、何といってもこのホテルの特徴は障がいを持つ方々に優しいと云う事です。一般のお客様も勿論お受けしますが優先は障がい者なのです。この地は有数の温泉地でもあり観光客も多いのですが、障がいを持つ方々に特化したホテルは見当たりません。障がいを持つ方々が安心して旅行ができて心おきなく寛げる場所は貴重なので、もしかすると行政の後押しも期待できるかもしれません。もうホテルの名前は決めています。『ホテル やすらぎ』です。亡くなった私の友人でもあったこの法人の前理事長が最初に作った施設名です。障がいのある方を受け入れ共同で生活する家でしたが、働ける人のために働く場所を作ろうと奔走してできたのが『毎日食堂』でした。
前理事長様、ここをスタートにして未来の職場『ホテル やすらぎ』の実現という “夢” が叶うように空から見守って下さいね。