【 一般財団法人 あすなろ会 会長賞 】

【テーマ:仕事探しを通じて気づいたこと】
やりがいってなんだろう
宮城県  木 村 仁 咲  21歳

「はい、今日の授業はこれで終わりますが、皆さんも仕事へのやりがいを見つけてくださいね」

その言葉で、講義は終わった。

私は、「仕事のやりがい」をあまり分からずにその授業を終えた。


「やりがいってなんだろう」心の中でモヤモヤしてる。

お金じゃなくて、気持ちなのかな。

授業では、お金は二の次と言っていたように、私は聞こえてしまった。

お金は悪なのかな。


考えるほど分からない。

その日は、一日中モヤモヤしていた。


次の日、私は、仙台から山形へ通うためのバスの中から外を眺める。

そこに、仙台駅を工事している人が目に入る。

あの人たちは、何をやりがいにしているのだろうか。

無意識的に思ってしまった。

そのまま、バスが進み工事の人が目の端に消える。


約1時間半かけて、仙台から高速に乗り山形の学校に向かう。

「やりがいってなんだろう。」


昨日からのモヤモヤが心に残りながら、

その日も授業を終えて、サークルに行き山形から仙台へ帰る。


家に帰ると私はあることに気づいた。

「あれ、定期どこにしまったっけ」

そう、私は定期をどこかに落としてしまったのだ。


とても慌てた。

山形と仙台を結ぶ定期は1ヶ月で二万円する。

私はまだ、半月しか使っていない。


「うわー親に言いにくい」

これは、自分で見つけるしかない。

しかし、家に帰ったのは11時

外は暗くて何も見えない。


明日の朝帰り道を見なきゃ。

そう決めてその日は寝ることに。


次の日、私は7時半に家を出て

昨日通った道を見る。


しかし、どこにも定期は落ちていない。

私は、藁にもすがる思いで、落し物センターに向かった。


仙台駅の落し物センターにつくと、若い男性の職員さんに丁寧に対応してもらった。

しかし、まだここの落し物センターには何も届いていなかった。


私が心配しているのを察して前向きな言葉をかけてくれる。

若い職員さんは、すぐに周辺の駅や警察にその場で電話をかけてくれた。

しかし、他のところにも届いていない。

「届いたら、連絡しますね」職員さんが言う。

とりあえず、私は待つ事しかできない状態になってしまった。

私は、忘れ物センターにお礼を言って、その日も学校へ行った。


定期がないと交通費だけで、なかなかの痛手。

お金のない学生にはとても響く


ため息つきながら、バスに乗ると、

また、昨日の工事現場の人たちが目に入る、

しかし、昨日とは違うモヤモヤが心を覆う

定期を無くしたせいでお金がかかる。


やっぱり、お金が人生には必要じゃないか。

少し、膨れながらやりがいに対してのアンサーを出す。


その日も、授業が終わり、さて、サークルに行こうかなと思った時だった。

突然、知らない電話番号からの着信

もしかしてと思い電話に出ると「木村さん、定期見つかりましたよ!」

私は、ホッとして脱力する。


しかし、問題は受け取りだ。

5時まで落し物センターはやっているが、私が今からバスに乗っても

30分ほど遅れてしまう。


その旨を、恐る恐る落し物センターの人に伝えると、

「分かりました、それではシャッターは閉まってますが、中で作業していますので」と快く受け入れてくれた。


急いでバスに乗り込む。


仙台につき、落し物センターに向かう

そこには、朝の男性が私のことを待っていたかのように迎えてくれた。


約1日ぶりの定期との再会。

とても安心した。

私は職員さんに沢山の感謝を伝えた。

すると、職員さんは、はにかみながら

「これが、私の仕事ですから、見つかって良かったですよ」

その時、私のモヤモヤが晴れた。


もちろんお金も生きていくために大事だが、

誰かに感謝されながら働くと幸せを感じられる仕事が

私のやりがいなのかもしれない。


その日は、色々な事が見つかった日だった。


次の日、定期を握りしめてバスに乗る。

そして、今日も工事現場の人が見える、しかし今までとは全く違う見え方だ

「カッコいい」

皆の便利のために、朝早くから汗水垂らしながら働く姿


私は「いつもお疲れ様です、ありがとうございます。」と心の中で唱えた。

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