【 入 選 】
短歌を始めて6年になる。きっかけは出産を機に退職したこと。そして子育てを通じて感じたこと、変わったこと、その諸々を何らかの形で書き留めておきたい。そんな気持ちがあったからだ。
幼少期、母は私に白紙のノートを一冊手渡してこう言った。
「このノートにあなたが思ったこと、感じたことなんでも良いから書きなさい。」
それ以来私はノートに散歩道の途中で思いついた物語を、或いは毎日の中で子供心に傷ついた自身の感情を連綿と書き記した。
書くことは常に私のライフワークであった。
子育てに関するエッセイや童話、完成した作品はその都度コンクールに送った。数えきれないほど落選もしたが、それでも自分の書いた作品が賞を頂くと計り知れない達成感があった。
中でも短歌は何度も賞に選ばれ、表彰式にも招待いただいた。それは私の中でまたとない経験になった。
今、少子高齢化が叫ばれ増えゆく過疎の村々では短歌による町おこしに力を入れられている所も多い。私が参加した表彰式でもそれぞれの地域と短歌との関わりやその地域の特色を丁寧に教えて下さり大変有意義な時間を過ごさせてもらった。
私は現在地方の交流協会で働いている。特産品の販売やふるさと納税に関連した仕事を請け負っているが、都市圏から来られたお客様に見どころや観光名所を聞かれることも多く、ふるさとへの愛着や知識はここ数年でかなり高まったと思う。
丁寧に地元の歴史や見どころを紹介し、田舎ならではの人と人とのあたたかな繋がりを味わってもらうため、真心こめたおもてなしをする……その姿勢に一切変わりはないがそれでも年々じわじわと観光客の数は減少の一途を辿っている。
どうすれば集客力をあげられるのか……度々職場でも話しあいがもたれるが、私はこれは一つの施設としての問題ではなく、地方全体の課題であると考えている。
それぞれの観光施設が観光客を奪い合うのではなく、連携し地域全体の観光客数を増やし地方としての魅力を増すことで必然的に集客力アップにつながるのではないか。そう考えた私は近隣の観光施設についても詳しく調べ、お客様にご紹介している。
また、高齢者の利用が多い施設でもある為誰もが気持ちよく施設を利用してもらえるよう荷物の多いお客様にはお声がけをするようにも心掛けている。
進学を機に都心部へと去って行く友人も多い中、私は一度も故郷を離れることなく今日まで生きて来た。それは単に機会がなかったと言うだけではなく、やはり多少の不便はあっても自分の生まれ育った町が大好きだったからだと思う。
私が表彰式で訪れた地域の方々も皆ふるさとに誇りを持ち、キラキラとした美しい瞳でその魅力を語っていた。その姿はひどく眩しかった。
私には今、夢がある。それは私が大好きな短歌を使って大好きなふるさとの町おこしをすることだ。
決して簡単なことではないだろう。それでも私の大好きな短歌で大好きなふるさとに貢献出来たら、これほど嬉しいことはない。その為にも短歌の勉強により一層励み、交流協会の仕事も今以上に頑張っていきたいと思う。