【 入   選 】

【テーマ:仕事探しを通じて気づいたこと】
やりがいとはがゆさ
国際医療福祉大学  黒 澤 美 律  19歳

「子供が好きなだけじゃ、この仕事はできないよ」

これは、私が高校時代にインターンシップで行かせていただいた保育園の先生から言われた言葉だ。これでも私は、保育士という仕事が如何に大変かということを十分理解していたつもりだった。しかし、実際に体験してみると、確かにそれは想像以上であった。毎日、1クラス何十人という子供を相手にしなければいけない。5歳前後の子供が全員、先生の言った通りに行動するということはまずない。その状況下で、園児1人1人にしっかりと気を配らなければならない。子供1人を育てるだけでも苦労するが、それが何十人となると、精神的・肉体的負担は計り知れない。

また、この先生は保育士の給料についても話してくれた。手取りで14万円程度だと聞いて、私は驚愕した。この金額は、私の友人が高校卒業後に就職した一般企業の手取り額より少なかった。大学時代に一生懸命学習し、国家試験に合格し保育士になった30代の方の給料より、私の通っていた高校で真面目に学習していれば取得できる検定試験に合格し就職した10代の友人の方が高い。一般企業での仕事量より保育士の仕事量の方が確実に多く、他人の子供を預かるため責任も重く、精神的にも肉体的にも大変なはずだ。それにも関わらず給料が低い。これは、とても不公平なことだと思う。なぜこのように辛い仕事を続けることができるのだろう。私がこのようなことを考えていた時、その先生はこう言った。

「確かに給料は安いし、仕事量も多い。理不尽なことも沢山ある。でも、子供の成長を近くで見守ることができるし、自分も子供と一緒に成長することができるからやりがいもあるし、楽しいよ。」

私は最初、この言葉を理解することができなかった。しかし、5日間のインターンシップの中で、徐々にこの言葉を理解できていったような気がした。私は、毎日違うクラスで活動していた。初日は2歳児のクラスに入り、そこから毎日1歳ずつ上のクラスで活動した。1歳違うだけでこんなに違うのかと何度も驚かされ、園児たちの成長に感心した。そして、たった5日間だったが子供たちの成長を見守ることができて嬉しかった。同時に、仕事量の多さを改めて実感した。紙芝居を読んだり、おむつ交換をしたり、外で遊んだ後や昼寝の前に着替えをさせたり、一緒に遊んだりなど、普段はしたことのないような仕事が沢山ありとても疲れた。一日働いただけでも、家に帰ったらすぐ寝てしまう程疲れたのに、私以上の仕事量を毎日笑顔でこなしている保育士の方々は本当に凄いと思う。

最近、近くの公園に行く途中の園児の列に車が突っ込む事故があり、大きなニュースとなった。園長先生が記者会見をしているのをテレビで見て、私はとても悲しくなった。報道を見る限り、保育士や保育園側には悪い点はなかったように思える。園児たちは信号機から離れたところで信号待ちをし、保育士は園児をかばうように車道側を歩いていた。それにもかかわらず、記者は「保育園側に非はなかったのか」と何度も尋ねていた。記者にとってはそのような質問が仕事だろうから仕方ないのかもしれないが、泣き崩れている園長先生にこのような質問を何度もするのは、無慈悲だと思う。

私は正直、将来保育士になるかまだ悩んでいる。この仕事の責任はとても大きく、精神的・肉体的負担は計り知れない。しかしその一方、苦労に見合うだけの尊い仕事でもあると思う。簡単に答えは出せない。私はこれからも、やりがいや待遇、子供の成長を間近で見られる素晴らしさとそのための辛さ、その他にも沢山のことをとことん考えて、悩んで、そして、自分の将来をしっかりと決めていきたい。

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