【 入 選 】
私は仕事を通じて、多くのお客様に「ありがとう」と言ってもらえるような人間になりたいです。そう思ったのは今年の4月に入社し、渉外課に配属になったつい最近のことである。
私が勤務する「信用組合」は、相互扶助を理念に掲げる地域密着型の金融機関です。利益を追求する株式会社の形態を執る銀行とは異なり、信用組合はお客様との信頼関係を何よりも重んじている。だからこそ私たち渉外課は、お客様と確固たる信頼関係を築くため、日々足繁くお客様のもとを訪問しています。今日まで数多くのお客様と出会い、営業担当としての立ち振る舞いや言葉遣いといったものを学んできました。しかし、もっと大切な渉外担当としての根本的な心構えを気づかせてくれたのは直属の先輩である中川さんでした。
私は以前まで、渉外担当は与えられたノルマをきっちり達成し、数字を上げることが遣り甲斐であると思っていました。しかしその考えは、お客様と誠心誠意向き合い、お客様の立場に立って仕事をする中川さんの姿を見て大きく変化しました。
ある日、お客様のもとへ訪問すると、その方は生協で購入した料金の支払いが上手くできず困っていました。公共料金といったものは当組合の口座から支払いができるのですが、生協の支払いには対応していなく、自分ではどう対処すればよいのかわからず困り果ててしまいました。けれども中川さんは、困った顔一つ見せず、生協のお客様センターに電話し、支払いを郵便局で行えるように代行で手続きをしてあげていました。中川さんは手続きを終えたその日以降も、「無事に支払いはできましたか?」とこまめに連絡を取っていました。そして後日、無事に支払いができるようになるとそのお客様は、わざわざ支店に電話をかけてくださり、中川さんに「ありがとう、ありがとう」とお礼の言葉を述べられていました。その時、中川さんは新米である私に大切なことを教えてくださいました。
「一見自分の成績には関係のないことでも、お客さんが困っている姿を見たら精一杯の努力をして力になってあげろよ。お客さんのその問題が解消された時、その方は心から喜んでくださるし、何より『ありがとう』と声をかけてもらえると自分への確かな自信に繋がっていくんだよ。俺もそうやってお客さんと共に成長していったし、お客さん自身も、してもらった恩はずっと忘れないでくれて、今でも話してくれるほどだよ。そうやって俺はお客さんと信頼関係を築いていったから、矢島君も困っている方がいたら真摯に向き合って、力になってあげるんだぞ。」
私はこの中川さんの言葉を受け、営業に対する認識が変わり、自分も中川さんのようにお客様と本当の信頼関係を築ける渉外担当になりたいと心から思いました。
私は多くのお客様から「ありがとう」と言っていただけるようにこれからも前進していきます。中川先輩のように目の前の成績ではなく、目の前で困っているお客様を第一に考え、仕事を通じお客様と共にいつまでも成長していける渉外担当になります。そしていつか中川先輩と同じフィールドで活躍できる渉外担当になってみせます。そのために日々一生懸命学び、お客様の気付きを良質な金融サービスの提供にとどまることなく支援できる職員として、地域のお客様に頼られる存在になりたいです。